ライフ

50代になった怪獣博士「ポンコツな自分も悪くない」と思うまで

子どものときは「博士」だった(イメージ)

子どものときは「博士」だった(イメージ)

 コミュ力だのコミュ障だのと、「コミュニケーション」をどのようにできるかが人の生活や仕事、はては人生まで左右するほど重要なこととして取り扱われるようになったのはいつからだったか。それと同時に、発達問題も含めコミュニケーションが苦手な人や独特な人を排除する雰囲気が強まっていないか。俳人で著作家の日野百草氏が、みずからを「ポンコツ」と評する50代男性が働く難しさについてレポートする。

 * * *
「子供の頃から怪獣の名前だけは完璧に覚える子でした。他はまったく覚えられない」

 緊急事態宣言から外れた埼玉県東部の大型ショッピングモール、コロナ禍ながら盛況な人波の中にドドンゴさん(埼玉在住・本人希望の仮名・50代)を見つけた。元は運送関係の取材をしていた中で知り合った方だが、打ち合わせ先のファミレスへの道すがら、仮名の由来に絡めて「ドドンゴだから奥多摩のほうがよかったですか?」と尋ねるとストーリーを機関銃のように話し出す。そう、ドドンゴさんは幼少期から『ウルトラマン』シリーズ、その中でも怪獣(以下、本稿中は恐竜、宇宙人、怪人も含む)が大好きだ。仮名のドドンゴも『ウルトラマン』第12話「ミイラの叫び」に登場する”ミイラ怪獣ドドンゴ”からだ。

「小学校では成績が悪くても平気で、むしろ怪獣博士って呼ばれてました。でも中学から(成績が)クラス最下位とかでバカにされるようになって、高校はお金を払えば入れる偏差値30(台)の底辺私立高校に単願で入りました」

 ファミレスに着いても話は止まらず、第19話「悪魔はふたたび」の青色発泡怪獣アボラスと赤色火炎怪獣バニラの対決まで行ったところで無理やり制してドドンゴさん自身の話に戻す。ミュー帝国(アボラスの出身地)で話を切ったため不満そうなドドンゴさん、一事が万事このような方で、先ほど筆者は「見つけた」と書いたが、ドドンゴさんは約束の時間に30分以上遅れて到着している。それは構わないが、場所すら忘れていたらしく、ラインで「僕を見つけてください」と顔写真入りで送ってきた。なので「見つけた」ということになる。この広大なショッピングモール、殺伐とした令和の越谷にも奇跡は起こる。

「私、昔からポンコツなんです。これでもマシになったほうですが」

 落ち着きを取り戻したドドンゴさん。話をまとめると、彼は幼少期から『ウルトラマン』シリーズが大好きで、その怪獣の名前からデータやエピソードに至るまで完璧に覚える「怪獣博士」だった。もちろんドドンゴさんの年齢を鑑みれば再放送、再々放送で観たものが多く、リアルタイム視聴の最初は保育園時代の『ウルトラマンA』ではないかとのこと(諸説語り続けていたが省略)。それはともかく、ドドンゴさんはそんなウルトラシリーズの怪獣しか覚えない子だった。学校の勉強はまったく駄目で、高校も地元から離れた底辺私立高校しか入れなかったという。

「高校に“行く”ってことはできたんです。でもそれだけ。テスト(の点数)はヤンキーより低かった。小学校までは何とかなってたんですが」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン