その日はジャニーさんにTBSの中を見学させてもらった後、「ユーもレッスン受けてみない?」って言われて。「ユー」も「レッスン」も意味がわからなかったんですけど、最後に食事代と交通費として1万円くれたんです。友達と分けても5000円ですよ。ぼくは小学5~6年生のとき、新聞配達をしてたんですけど、1か月にもらえたのが5700円。なのに、ここに来ただけで1回5000円! ソロバン勘定が反応しましたね(笑い)。
それから1年くらいブランクがあったんですが、突然、ジャニーさんから自宅に電話がかかってきて「ユー今度の日曜日、銀座の電通、来られる?」って。また「銀座」も「電通」もよくわからなかったんですけど、まぁ行ってみようと思って行ったら、マッチ(近藤真彦サン)がメインのCMオーディションでした。なんせ1年ぶりなんで全然踊れないし、いちば~ん後ろにいたんですよ。そうしたら振付師の西条満先生が「きみ、いちばん前に来て」って。しかたがないから前に行って、でもやっぱり明らかに周りの子より劣っていたのに、なぜか受かっちゃうんです。
「勘違いしないで、そんな歌じゃないから」
薬丸:その後『2年B組仙八先生』(1981年・TBS系)が1年続いて、それが終わる頃に、「ユーたち、5月にデビューするから」って。さらに「ユーだけ、ちょっと大河ドラマ出るから、NHK行って来て」と。学園ドラマの後に大河ドラマですよ(笑い)。まだマネジャーもついていないときに衣装合わせしてヅラ合わせして、『峠の群像』(1982年・主演:緒形拳・享年71才)に4話だけ出させてもらいました。ジャニーさんって、頭の中でタレントの未来像がパズルを組み合わせるようにできていて、先々、何枚パズルが加わっても、キレイに並べてしまうようなかたなんですよね。
山田:先見の明ということでいうと、ジャニーさんがプロデュースされた曲は、いまも後輩の皆さんたちに歌い継がれています。ジャニーズに“トンチキソング”と呼ばれるジャンルがあるのをご存じですか? シブがき隊の曲だと『スシ食いねェ!』とか『サムライ・ニッポン』ですね。
薬丸:トンチキ?(笑い)いわんとしていることはわかりますよ。『スシ食いねェ!』は今年1月、『みんなのうた60』(NHK)でNEWSが歌うっていうとき、まっすー(増田貴久クン・35才)が「大切に歌わせていただきます」ってメールくれたんで、「勘違いしないで、そんな歌じゃないから」って返信したら、そのとおりオンエアで話しちゃって(笑い)。やっぱりぼくらはコミカルな部分を担当してたと思うんですよ。その証拠に、ぼくらは1回もジャニーさんにコンサートの演出をしてもらったことがない。でも、歌の合間のトークはほめられていたらしいです。直接ほめられたことは一度もないけど。中居(正広)クン(48才)とかにもジャニーさんは「シブがき隊を観に行け」って言ってくれてたらしいんですが、トークコーナーが終わると、みんな帰っちゃった。