スポーツ

ドラフト注目・森木大智はなぜ甲子園に出られなかったのか【前編】

高知高校・森木大智の軌跡を振り返る

高知高校・森木大智の軌跡を振り返る

 10月11日、プロ野球のドラフト会議が開催される。今年の注目は「高校BIG3」と呼ばれる3人の高校生右腕だが、そのなかに一度も甲子園の土を踏めなかった球児がいる。高知高校の森木大智。「150キロを投げた中学3年生」として注目を集めながら分厚い壁に阻まれ続けた森木の軌跡を、ノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。(文中敬称略。前後編の前編)

 * * *
 秋のドラフト会議(10月11日)まで2週間というのに、高知高校のグラウンドは30度を超える蒸し暑さに包まれていた。

 来春のセンバツを目指して練習に励む後輩たちから離れたブルペンで、森木大智は学校が借りているという「ラプソード」(ボールの回転数や回転軸、球速を計測する機械)を使ってストレートの回転数(毎分)を計測していた。ある一球を投じた時、森木が驚きの声をあげた。

「おおおっ、メジャーリーガーの数値が出た(笑)。でもこれ、絶対に(計測器の)バグっしょ」

 トータルスピン量が「2730」と表示されたのだ。甲子園に出るような球児でおよそ2000回転、山本由伸(オリックス)や千賀滉大(福岡ソフトバンク)といった日本プロ野球のトップ選手が2500回転程度とされる。異次元のスピン量に計測器の不具合を疑っていたが、無限大の可能性を感じるボールであることには違いない。

「自分のストレートは(ボールの傾きを指す)ジャイロ成分が強く、抜けることもある。できるだけ綺麗な真っ直ぐの回転で、ボールが打者のバットの上を通過するイメージを追求したい。もちろんストレートだけでは抑えられない。こうした機械も使って、変化球の精度も上げていきたい」

 中学時代に軟式球で150キロを記録し、森木は今年の高校3年生世代で誰よりも早く、大きな注目を浴びた。

 だが、一度も甲子園のマウンドを踏むことなく、2年半の高校野球生活を終えた。

 森木を初めてインタビューしたのは高校入学直後の2019年春だった。

「小さな頃からずっとプロ野球選手になりたいと思っていました。(中高一貫校の)高知中学を選んだのも野球を職業にするためです。中学生というと、身体が成長し、変化していく時期。規則正しい生活を送って、しっかり食事も摂って、野球やトレーニングの知識を増やしていきたいです」

 同校監督の浜口佳久は長く系列の高知中学で軟式野球部の監督を務め、森木を擁して中学日本一を達成。直後の2018年秋に高校の硬式野球部監督に就任していた。

 もし浜口が監督に就任しなければ、熱心な勧誘を受けていた大阪桐蔭や中学時代に日本一を争ったライバルがいる宮城・仙台育英に森木は進んでいたかもしれない。浜口監督と共にもう一度日本一を目指す──それが高知高校に進学した理由だ。また中高一貫校の場合、高野連に届け出れば、中3の秋から高校の練習に参加できることも、軟式から硬式にボールが変わる森木には幸いした。当時、浜口はこう話していた。

「中高一貫校に導くということは、その子の幼少期、小学生時代から関わることになる。少年野球時代の故障とか、ポジション歴を頭に入れた上で、中学で指導にあたれるのは大きいです。どこまで無理をさせられるのか、どういう成長段階にあるのか、ということを把握しているわけですから」

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン