神奈川歯科大学附属病院認知症・高齢者総合内科教授の眞鍋雄太医師が指摘する。

「もともとPDE阻害薬には認知症の症状改善効果があると言われていました。PDE阻害薬にはいくつかの種類がありますが、バイアグラとは別の種類にあたるPDE4D阻害薬はアルツハイマー型認知症、PDE9阻害薬はレビー小体型認知症の認知機能を改善する薬として創薬されて治験が行なわれています。2つの薬は神経細胞内の情報伝達をコントロールし、神経細胞を保護することで認知機能を改善する働きが期待されます。

 一方、PDE5阻害薬であるバイアグラも本来の局所血流改善作用に加えて、脳内の神経細胞を保護して認知機能を改善する可能性があります。すでに他のタイプのPDE阻害薬の治験が進んでいることを考えると、バイアグラがアルツハイマー予防薬として認可される動きが現実になるか私は疑問ですが、そうした効果があっても不思議でないことはたしかです」

 期待が大きいバイアグラだが、服用時の注意事項もある。最も注意すべきは「飲み合わせ」だ。

「ニトログリセリンなど虚血性心疾患治療薬の硝酸剤やNO供与剤とバイアグラを併用すると、血圧が急激に下がって心臓血管系のトラブルが生じるリスクがあります」(永井医師)

 過去には高血圧、糖尿病、不整脈の持病がある60代男性がバイアグラを飲みセックスをしたところ、服用から3時間半後に死亡したケースがある。

 この男性は不整脈の治療で使用禁忌であるニトログリセリン貼付剤を使用していたという。

「薬には効果と副作用が必ずある。心配なことがあればかかりつけ医に相談を」(永井医師)

 この薬の可能性は、どこまで広がるのだろうか。

※週刊ポスト2022年2月11日号

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