宇多田ヒカルの『花束を君に』もNHKが権利の一部を保有する(GettyImages)

宇多田ヒカルの『花束を君に』もNHKが権利の一部を保有する(GettyImages)

「CDだけでなくDVDやカラオケ、コンサートなどに加えて、その曲がテレビで流れるだけでもJASRACを通じて管理者に著作権使用料が入る。朝ドラなどの場合、レコード会社とNHK出版が印税配分の交渉をすることもあるのですが、曲を選ぶ立場にあるNHKの方が力関係は上。有利な条件を受け入れるレコード会社ほど、取引がスムーズになるとさえいわれています」(音楽業界関係者)

 NHK出版の影響力は朝ドラだけでなく、NHKの全番組に及ぶ。現在放送中の『鎌倉殿の13人』のメインテーマをはじめ、歴代の大河ドラマや子供向けの音楽番組『みんなのうた』の楽曲も同社が出版権の一部を保有することが慣例になっているのだ。

「350万枚売れた『だんご3兄弟』や、中島みゆきさんが歌った『プロジェクトX 挑戦者たち』のテーマ曲『地上の星』もNHK出版が権利を保有しています。欧米では放送局がレコードの出版権を持つこと自体が禁じられていますが、日本のテレビ局はそのあたりの感覚が非常にルーズ。民放でもドラマのタイアップ曲はそれぞれ局の子会社が権利を保有するケースが少なくない。公共の電波を使って曲を流す放送局が、曲がヒットするたびにボロ儲けする構造があるのです」(前出・音楽業界関係者)

年間35億円を超える収入に

 問題は、NHKが営利活動を行わないことを大前提とする公共放送であることだ。NHKのホームページにもこう記されている。

《公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送といえる》

 ところが、現実には子会社のNHK出版の権利ビジネスを通じて巨額の利益がNHK本体にもたらされている。

 NHK出版の2020年度(第94期)の事業報告書によると、同社が著作権を管理する楽曲は6万曲超。音楽著作権等管理収入は35億円を超えた。

「この年は嵐が歌う2020ソング『カイト』や、米津玄師の『パプリカ』の権利で大幅に利益が増えたようです。

 NHKは、NHK出版の筆頭株主で、期ごとに配当金も支払われている。朝ドラなど番組内で曲がかかるたびに、NHK出版に著作権料が支払われ、その利益がNHKに還元される。子会社なら営利活動をしてもいいというのは詭弁にすぎず、結局はNHKが潤う仕組みになっているのです」(前出・音楽業界関係者)

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