そうして大新聞・テレビが次第に権力に刃向かう牙を抜かれ、安倍政権の“宣伝機関”へと傾斜を強めていくなかで、批判的な姿勢を保ってきたのが朝日だった。「森友学園」の国有地売却問題や加計学園の獣医学部新設問題を追及し、財務省の公文書改竄をスクープして安倍氏を追い詰めた。
しかし、今回の報道介入問題で、朝日内部の“安倍応援団”の存在が浮かび上がった。元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司氏が語る。
「NHK政治部の岩田記者は安倍首相の懐刀なんて言われていたが、話すことは結局、安倍さんの宣伝と受け取られかねない面があった。峯村さんも“オレは安倍さんに安全保障についてレクしている、安倍さんに食い込んでいる”と社内にアピールしたかったのかもしれないが、記者が向き合う相手は読者以外いないはずだ」
朝日の峯村氏への処分もおかしいと続けた。
「朝日の綱領のひとつに『不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す』とあるが、朝日新聞の読者は中道から左派の人が多い。政府に批判的な読者が多く、安倍さんは保守の右派で再軍備を主張しているから朝日の立場とは違う。
朝日にはかつて社会党の土井たか子さんの事務所内に自分が主導する市民団体を設置するほどの記者もいたのに、処分などされなかった。なぜ峯村さんだけ処分するのか。安倍さんとつながっていたからなら、不偏不党の処分とは言えないのでは」
峯村氏の行為は「反安倍」という朝日の看板がすでに朽ちかけていることを示している。だからこそ、朝日は慌てて処分に踏み切ったのではないか。そんな内情を思わせる指摘だ。
※週刊ポスト2022年4月29日号