母親の本音。約4割が「子供を産まなければよかった」

母親の本音。約4割が「子供を産まなければよかった」

「幼い頃からピアノ一筋で音楽大学を出てピアノ講師をしていましたが、32才で出産してからは休業状態に。培ってきたスキルや実績が何も評価されず、『母親0才』として人生を再スタートさせられただけでなく、これまでの人生が否定されたようにも感じました」

 愛知県在住のCさん(45才)は、こう心情を吐露する。

「子供が公園で転んでひざを擦りむいたら、義母から『母親が見てたのに』と冷たい目で見られ、中耳炎で病院に連れていったら『お母さん、子供の様子でわからなかったんですか?』と言われました。母親は何でも子供のことを知らないといけないの? 責められるたびに母親になったことを後悔していました」

産んでこそ一人前という呪縛

 女性たちが「母親になったことの後悔」を口にしにくい現実について、『母性の抑圧と抵抗—ケアの倫理を通して考える戦略的母性主義』(晃洋書房)などの著者で、家族社会学者の元橋利恵さんはこう分析する。

「母親が男性と同じように仕事を持つことが当たり前となりつつある一方で、育児や介護の担い手として期待され、子供を育てる責任が母親に偏っている状況は変わっていません。

 つまり多くの女性たちが母親になったことを後悔し、子育てを中断してしまっては、社会や家庭が根本から崩れてしまうと思われているのです。

 そのため、女性は『本能的に母親になりたがっている』『家族のケアをしたがっている』という母性神話が浸透し、母親になりたがらないのは異常な事態として排除されてきた。出産直後に母親であることを拒否したり、違和感を示すと『産後うつ』と診断されるケースもあります」

 後悔を「恥」と感じ、口を閉ざす母親も多い。

「結婚や出産は女性が希望して“駒を進める”ものだと思われています。後悔や泣き言を口にしても『自分が選んだのだから』と片付けられる傾向があるのです。さらに、後悔を言葉にしてわが子に伝えなくても、そのような考えを持つこと自体が子供自身を否定することになると感じ、本音を心の奥底にしまい込む人が多くいます」(元橋さん)

 ドーナト氏は、母になりたいという「意志」はないが、母になることに「同意」する女性の気持ちに目を向けるべきだと主張する。

『母親になって後悔してる』に登場する女性たちの中には、明確な自分の意志で子供を持ったわけではないと語る人が複数いた。たとえば、こんな声がある。

《私は他のみんなと同じようになりたかったんです。それが正しいことだと思ったし、自分の結婚のためにも、私自身のためにも善いことだと思いました。実際にどうなるのかを知らなかったのです》

 学校を卒業し、就職し、結婚して子供を産む。「子供を産んでこそ一人前」といった“圧力”を感じたと話す女性が一定数いるというのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン