“新原ペーパー”
「新しい資本主義」は岸田政権の掲げる目玉政策である。岸田政権発足前夜、新原氏は水面下で動いていた。筆者の手元には“新原ペーパー”と呼ばれる書類がある。
〈秘 木原先生 岸田新政権の樹立に向けた留意事項〉
昨年10月初旬、岸田側近の木原誠二氏(現・官房副長官)に極秘裏に提出されていたものだ。9月29日の自民党総裁選で岸田総裁が誕生した直後の時期であり、まさに新政権発足を睨んで作成されたものだった。
新原ペーパーは新原氏が数々の提言を行なう内容になっている。特に興味深いのは、菅政権で設置された成長戦略会議を廃止して、岸田政権では「新しい資本主義実現会議」を新設すべきとの提言に紙幅を大きく割いているところだろう。そして、件の十倉氏をメンバーに入れることを強く推薦しているのだ。例えばこんな具合だ。
〈成長戦略会議のメンバーについては、委員の構成がリアリティを欠くとの意見が多い。(デービッド・)アトキンソン議員(小西美術工藝社社長)、三浦(瑠麗)議員(国際政治学者)は少なくとも替えるとともに、経済界から要請がある十倉経団連会長を未来投資会議までと同様に、加える方向で検討する必要がある〉
岸田政権では新原ペーパー通りに、成長戦略会議は廃止され「新しい資本主義実現会議」が新設される形となった。十倉氏をはじめ新規メンバーとして「不可欠」とされた人物はみな「新しい資本主義実現会議」の有識者構成員に加えられた。
「このペーパーは新原氏が、いかに岸田政権を操ってきたかを示している。自身を冷遇した菅政権への意趣返しで菅氏のブレーンだったアトキンソン氏をバッサリ切り、『新しい資本主義実現会議』に十倉氏をねじ込むことに成功した。岸田首相がいくら“分配”を強調しても、経団連という最強のロビー団体の会長をメンバーに入れたということは、大企業優遇の方針が岸田政権でも続くと見ていい」(官邸関係者)
新原氏自身は「新しい資本主義実現本部事務局」では事務局長代理という要職に就いた。事務局の組織ではナンバー3のポジションだが、事務局長(栗生俊一・官房副長官)と事務局長代行(官房副長官補)はいずれも兼務であり、事実上のトップとして仕切っているのが新原氏なのだ。