さまざまに話題になった安倍氏の桜を見る会
ビデオメッセージ
一方、1993年の総選挙で初当選した3代目の安倍晋三氏は、祖父や父と違って、旧統一教会とは距離を置いていたという。それというのも、「反共」を掲げていた文総裁が1991年に突然北朝鮮を訪問、当時の金日成主席と会談して密接な関係を結んだからだ。
拉致問題で北朝鮮に厳しい姿勢を取ってきた安倍氏は、そうした旧統一教会と北朝鮮との関係を警戒していたようだ。
しかしその後、安倍氏が昨年9月12日、旧統一教会系の「天宙平和連合(UPF)」の集会に、こんなビデオメッセージを寄せていることを本誌は報じている(2021年9月27日発売号)。
〈今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します〉
韓鶴子氏は統一教会創立者である文氏の妻で、世界平和統一家庭連合の現総裁。UPFは韓氏が2005年にニューヨークで創設したNPOだ。ちなみに安倍氏の前には米国のトランプ前大統領もスピーチをしていた。
安倍氏が旧統一教会と北朝鮮の関係を警戒しつつも、歴史的経緯の中で祖父の岸氏、父の晋太郎氏から続く旧統一教会との関係を完全には断ち切れていなかったことを物語る。そして、その動画を見た容疑者は、犯行に突き進んだという。
だが、そうした岸─安倍家と旧統一教会の歴史的関係を踏まえて考えても、「家庭を壊した団体を日本に招いたのが岸氏で、その孫の安倍氏を狙った」という容疑者の認識は筋違いも甚だしく、事件が犯人の誤った動機による悲劇だったことを改めて思い知らされる。
※週刊ポスト2022年7月29日号