必要経費も自腹を切る
歌舞伎界の存続にかかわる給与削減はなぜ行われるのか。
「ほとんどの歌舞伎役者は松竹と契約を交わしているわけではない。舞台の出演回数や出演料は役者個人と松竹が話し合って決まります。いわばフリーランスのようなもので、勤務時間や勤務日数などの取り決めはありません。基本的に雇う側の松竹の意見が強く、厳しい労働環境とも言えます」(松竹関係者)
個人格差が大きく誰がいくらもらっているかは秘密のベールに包まれているという。
「松竹からの給与は年次や実績、人気などによって変わります。他人がどれだけもらっているか誰も把握していません。ただし舞台に出演しない月にもらえる給与の割合は、若手の役者になるほど手厚くなるルールがありました。給与のベースが低くなるため、休みの月でもしっかり保証しないと生活が成り立たないからです」(前出・歌舞伎関係者)
歌舞伎役者はお金がかかる職業だ。
「衣装はもちろん、歌舞伎役者として研鑽を積むための資料や習い事はすべて自腹です」(前出・歌舞伎関係者)
芝翫クラスになるとさらに出費がかさむ。
「弟子は松竹からの給与がありますが、付き人や番頭の給金は芝翫さんが個人で支払います。また、幹部クラスは弟子が試験に受かったり結婚したりしたらご祝儀、弟子が病気になったら見舞金が必要です。ほかにも自分が座長の舞台は中日や千穐楽に楽屋見舞いとして、出演者に豪華な弁当を差し入れなくてはいけない。持ち出しの金額もかなりのはず。金銭的な余裕はないでしょう。
三田さんが夫の不倫発覚後も笑顔で会見に臨み尻ぬぐいをしたのも、『芝翫の評判』を落とさないため。言ってしまえば資金を回すためです。その評判が弟子たちをはじめ皆の生活に直結するわけですから」(前出・歌舞伎関係者)
それでも芝翫は過去には大河ドラマの主演を務めるなど歌舞伎以外でも活躍できる場のある希有な存在であり、歌舞伎の危機を救うため前線に立つべき立場でもある。