ステージIVの大腸がんを患いながら、23才で娘を出産した(2020年7月。写真提供/遠藤和さん)
シングルファーザーとなった将一さんは、都内で会社員として働く。今年4月からは自宅近くの保育園に娘を預けている。毎朝6時に起きて娘の着替え、朝食を済ませ、保育園に送ってから出勤。退勤後は、まっすぐ帰宅してかばんを置き、夕食の準備を整えて娘を迎えに行く毎日だ。
すっかり育児のペースを掴んでいる将一さんだが、2才になるまでは、仕事を中断して園に駆けつけたことも月に2回ほどのペースであった。
「特に入園当初はよく熱を出して、急遽打ち合わせを代わってもらうこともありました。和のご両親は都内にいて『いつでも頼って』と言ってくれます。もちろんお願いをするときもありますが、甘えすぎずに、ぼくの手で育てたいと思って頑張っています」
和さんの生前はチャーハンしか作れなかったという将一さんだが、最近は娘のためにご飯を作っているそうだ。
「今日は甘口のカレーと卵焼きを作りました。娘は好き嫌いなくよく食べるので、料理を頑張ろうと思えます。栄養バランスをとるために、娘には、絶対に野菜を食べさせるようにしています。和だったらもっと細かくこだわるかもしれないけれど……」
娘と2人の生活。和さんが亡くなってからは、まだ1年しか経っていない。
「育児の悩みや、娘の成長の喜びを分かち合えないと実感すると、やっぱり……。先月、寝る前に飲んでいたフォローアップミルクをやめさせたら、違和感からか寝つきが悪くなってしまったんです。和がいたら、夫婦で相談できたのにな、とか。和が娘によく歌ってあげていた『とんとんとんとんひげじいさん』を、娘が口ずさんだ日には、深夜に泣いてしまいました」
将一さんにとって、娘がそばにいることは「救い」となっているという。
「時には怒ることもありますよ。でも、娘は本当にかわいい。かわいいを超えて、愛おしい存在です。和はいま頃、『ほらね、娘を産んでよかったでしょ』と笑っているんじゃないかな」
ぐずり出す娘を前にしても、将一さんは動じることなく、慣れた手つきで抱き上げる。娘を見つめるまなざしには、愛があふれていた。
※女性セブン2022年9月15日号
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