ライフ

「ネットde真実」に目覚めた高齢の親、息子はタブレットを贈ったことを後悔も

米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設で、埋め立て用の土砂が搬入される米軍キャンプ・シュワブのゲート前に座り込んで抗議する人たち。2022年8月(時事通信フォト)

米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設で、埋め立て用の土砂が搬入される米軍キャンプ・シュワブのゲート前に座り込んで抗議する人たち。2022年8月(時事通信フォト)

 インターネット上の情報がすべて正しいと思い込むことや、そう考えている人のことを揶揄するネットスラング「ネットde真実」とは、2000年代はじめに匿名掲示板に書き込まれたマスコミ批判の投稿に「俺たちはネットで真実を知ることが出来る」とあったことが始まりだと言われている。最近、その揶揄されていた思考パターンが高齢者にも広がり、家族との軋轢のもととなっている。ライターの宮添優氏が、ネットde真実に支配された親の言動に振り回される子供たちに聞いた。

 * * *
 久々に実家に帰ったら「親がネトウヨ(ネット右翼)になっていた」とか「家族が反ワクチン主義者になっていた」などという記事を見かけるたびに、これがいわゆる「情報化社会」の成れの果てなのか、と考えてしまうのは筆者だけではないだろう。むしろ、人間が作った新しい社会の仕組み、情報の流れについていけない人々が増えているだけ、という見方をする人もあるかもしれない。いずれにせよ、あまりにも受け取る情報が増えすぎたために、それらをどうやって選別し、自分なりに咀嚼して飲み込むかといった、一見簡単に見えることがとても困難になってしまったことは確かなようだ。

「それがお母さんとお父さんにどんな関係があるの? そう聞いても、これは国の問題だから、お父さんはわかっていないのと頑なな姿勢を崩さない。最初は単なる頑固かと思いましたけど、違う」

 大阪府出身の会社員・片桐洋平さん(仮名・40代)は、この一年ほど、週末夜に母親からかかってくる長電話にうんざりしている。母親が最近よく振ってくる話題は、主にネット上で議論になっている政治問題についてだ。

「話題になっているひろゆきさん(2ちゃんねる創設者)と辺野古基地の問題では、母はひろゆきさんをかなり激烈に罵倒していましたが、そもそも母は政治問題に興味が無かったはず。内容を聞いても、誰かの受け売りとしか思えない。言葉遣いも荒くなったし、こうなった原因が私にあるとすれば、後悔しかないです」(片桐さん)

 インターネットの匿名掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)創設者で、英語圏の匿名掲示板4chan管理人のひろゆき氏のTwitter投稿がきっかけで起きた、沖縄県名護市辺野古での反基地運動をめぐるネット論争は、かつての匿名掲示板ユーザーたちの性質を承知していれば、本当に議論されるべき問題だったのか、疑わしくも感じてしまう。とくに2ちゃんねるの負の側面とも言える、あおりとそれを面白がる一部ネットユーザーの悪癖を知っていれば、強く非難を続ければ続けるほど、争うやりとりが続くので彼らが楽しむだけだ。「おさわり禁止」とスルーすることが効果的であると、かつてPCから匿名掲示板を閲覧した経験があるひとなら覚えがあるだろう。ところが、そういった経験を経ていない片桐さんの両親は、SNSの片隅で起きているにすぎない論争であっても、大真面目に受け取って感情移入してしまう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン