2004年、『世界の中心で、愛をさけぶ』の完成会見(時事通信フォト)

2004年、『世界の中心で、愛をさけぶ』の完成会見(時事通信フォト)

「当時は中3で、撮影中に『やめたいなあ』『磐田に帰りたいなあ』とブツブツ言っていました。主役なのにそんな気持ちを吐露しちゃう(笑)。面白いと思った」

 そう話す古厩監督には、長澤本人にも明かしていないエピソードがあるという。

『ロボコン』は落ちこぼれ4人組がロボットコンテスト優勝を目指して奮闘する物語。見せ場となるコンテストでは長澤がロボットを操縦するシーンがあった。

 ただ、撮影で使うロボットは3分間の競技用に作られたものだったためそれ以上時間が経過するとネジが外れたり一度止めると動かなくなったりする。一度でも操縦に失敗して壊れれば撮影中断となり、数百万円の損害が出る。3分間の“一発撮り”しかなかった。

 その操縦をあんな弱音を吐く少女に任せていいものだろうか──。スタッフの間で議論になった。

「私たちが裏で動かして彼女は操作している素振りだけにすることもできました。でもそれだと緊迫感に欠けるだろうと、彼女を信じて実際に操作してもらったんです。そしたら彼女は見事にやり切った。グッと唇を噛んで周りも驚くほどの集中力で演技をする。すごく勇気のある女優だと感じました」(古厩監督)

 長澤は『ロボコン』についてこう語っている。

〈初めて演技を知ったというか。演技ってこういうものなんだなって思いました〉(『キネマ旬報』2003年9月15日号)

 以降、彼女の女優としての注目度はますます高まっていく。

後編に続く

※週刊ポスト2022年12月2日号

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