国内

『鎌倉殿の13人』は実録ヤクザ映画だ 鈴木智彦氏が分析する山口組との類似性

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)

 いよいよ最終回に向けて緊迫感が増すNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。ドラマを観ていて、ある組織との類似性に驚いたという、フリーライターの鈴木智彦氏が分析する。【前後編の前編】

『鎌倉殿の13人』は、ほぼ実録ヤクザ映画である。描かれるのは権力闘争とテロリズムで、ヤクザ映画のテーマともろに被る。暴力は万能で、全てを解決する唯一の手段だ。だから人間という野蛮な種は、欲望を実現させるため同族を大量に殺す。現代でも戦争とテロリズムは根絶できず、世界中で殺し合いが絶えない。日本史の中でも、鎌倉幕府は特にヤクザっぽい。貴族支配と武家支配が切り替わる過渡期だからだ。

 武家政権が確立する以前も、奸智に長ける貴族たちの欲望が陰謀の種となり、京の都では陰湿な権力闘争が日常茶飯だった。だが、武士は貴族と違い、弱肉強食の論理を奉じる暴力集団である。勝った側の理屈が正義であり、揉め事がこじれれば殺し合いでカタをつける。武家政治の中心地である鎌倉では謀略=謀殺を意味し、実際、鎌倉の空気は、殺人が頻発する犯罪都市さながらにピリピリしていた。

「武士が台頭するまで、京都にテロは発生しませんでした。一方鎌倉はテロが日常茶飯事なんですよ。争いがあると常に人殺しに発展しかねない町なんです。映画でいうと『仁義なき戦い』とか『ゴッドファーザー』なんかのエリアなんですね」

 国際日本文化研究センターの井上章一所長はNHK・BSの番組に出演してこう解説した。NHKだけあってタイトルは『英雄たちの選択 北条義時・チーム鎌倉の逆襲』と抑え気味だが『広域暴力団・鎌倉連合会の全国制覇と内部抗争』と言い替えたほうが分かりやすいだろう。

「西のヤクザ」と「坂東武者」

 特に鎌倉幕府は日本最大の暴力団・山口組に似ている。山口組は山形県・広島県・沖縄県などを除くほぼ全国に傘下団体を持ち、今や暴力団員の2人にひとりが山口組組員というマンモス組織だ。世界規模の知名度を誇り、他団体の組織名を知らなくても、山口組の名前だけは聞いたことがあるだろう。組織の代紋が菱形なのもよく知られているので、「出身は山口、星座はヤクザ、血液型は菱形」という盛り場の定番ジョークもある。

 ヤクザの親分たちは本家の所在地で呼び合うので、山口組とそのトップは本来、発祥の地である「神戸」だった。しかし2015年8月に山口組が分裂、離脱組が『神戸山口組』を旗揚げして“神戸”の名称を戦略的に横取りした。六代目山口組・司忍組長は名古屋に本拠を置く弘道会の出身で現在も名古屋に自宅がある。現在、山口組総本部は神戸市の篠原本町だが、山口組本家は名古屋を意味するようになっている。

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン