この店舗も何度も泥棒に入られ、何度もニュースで取り上げられた。そしてある夜、我慢の限界が訪れた。
「深夜に外から何人もの男の人たちが言い争うような声が聞こえました。驚いて主人が飛び出すと、無人店舗の前で、泥棒と思われる男が取り押さえられていたんです。その横には、テレビカメラや野次馬もいました」(本田さん)
この夜、何度も泥棒に入られる無人店舗の密着取材が行われていたらしく、偶然犯人がやってきて「捕物劇」が展開されていたというのである。テレビクルーや野次馬は、犯人を前に興奮したのか、大声で怒鳴ったり喋ったり、間も無くパトカーが何台もやってきて、深夜にもかかわらず周辺は騒然としたという。もちろん、泥棒が悪いのであって、被害者である店舗側を責めるつもりは本田さんにはなかったが、騒動が切れ間なく続いて苛立ちを抑えられなくなってきた。
「もちろん、商売の邪魔をするつもりはないんです。でも、無人店舗があることで、近隣住人が不安がっているし、夜な夜な”ここがよく泥棒に入られる店”と騒ぎながら見物にやってくる、やんちゃそうな人たちもいる。主人があまりにも頭に来て、現場にいた店主に”もうこの形態での商売はやめてほしい、近所中が迷惑している”とお願いしたんです」(本田さん)
ところが、店主は「こっちは被害者だ」とか「文句があるなら泥棒にいえ」と、警察官もいる前で、本田さんの主人に凄んできたのである。
「こんなことが3度ほどあり、取材に来ていた地元テレビ局や新聞社にクレームを入れたところ、取り上げるのをやめてくれた社もあったようですが、これは炎上商法じゃないのかと近所中で噂になっています。泥棒はいけないんですけど、正直、住民を不安にさせるような商売をしている店主側にも、問題があると感じます」(本田さん)
商売に口出しするなと逆ギレされる
北関東在住の飲食店経営・坂本浩史さん(仮名・40代)も、やはり近隣に「無人販売店」ができて以降、大きな不安を感じている。
「もう何度も泥棒に入られていて、テレビニュースにも取り上げられるし、面白半分の見学者が深夜でもやってくる。何度も被害にあっているのだから、防犯体制をもっと強化するなり、キャッシュレス対応にして現金を店におかない、お金を入れてからしか商品を取り出せなくするなど、やりようはあると思うんです。でも、オーナーに言っても全く改善されないし、人の商売に口出しするなと逆ギレされる。すぐ近くで商売をしている人たちは、ついでにうちにも泥棒が入るんじゃないかと気が気じゃなかった。しまいには、何度も取材され注目される店舗を僻んでいるとまで吹聴されました」(坂本さん)