他局のアーカイブは「編成間調整」で入手
調査は他局の番組にも及んでいる。たとえばバカリズムが発表した「柴田理恵号泣史」では、膨大な映像素材をつぶさに見て「いつから泣き、何で泣いてきたのか?」を解き明かしていた。それだけではなく彼女の泣き方を「小泣き(素泣き)」「中泣き(拭い泣き)」「大泣き(メガネずらし→ハンカチ拭い)」「満点大泣き(メガネ外し→大拭い)」と4段階に分けて計測したり、泣いた映像の種類を分類したりしていた。
「各局の番組で泣いているものもひたすら調べるんですけど、柴田理恵さんが出ている番組から、感動系の番組という目線でリサーチしました。とんでもない作業なのですが、後から『こんなものもありました』って言われたらちょっと恥ずかしい。だから徹底的に調べていますね」
映像メディアが乱立している昨今、テレビの長い歴史とそのアーカイブは、テレビが持つ大きな武器のひとつだ。『バカせまい史』はそれを最大限にいかした番組といえるだろう。自局の映像はもちろん、他局の映像もふんだんに使用している。
「いま、テレビ局同士で『編成間調整』っていう仕組みがあるんですけど、編成同士で『この映像を貸してくれませんか?』みたいなやり取りをするんですよ。そのため僕らはまず編成に日本テレビさんの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』を見たいですってお願いして、編成が日本テレビさんの編成にお願いするという形になっています。
いろんな局に後世に残したい素晴らしい番組があるというのが、やっぱりテレビ界の財産だと思います。そこにみなさん共感してくださり、“あの番組がもう1回、日の目を見るんだったらフジテレビの『私のバカせまい史』に貸してもいいよね”って気持ちで出してくださるんじゃないかと勝手に思っています」
しかし、我々視聴者が想像している以上に映像の二次使用には(当時の出演者への再放映料など)お金がかかる。それは自局の番組でさえもそうで、他局のものならなおさらだ。
「お金はかかります。今は正直、番組予算度外視な部分もあります。やっぱりそこを惜しんでしまうと、この番組の良さが出ないので、なるべく気にしないようにしています。“何十年も前にこんなスゴい映像がありました!”って時に、お金が足りないという理由だけで世の中の若い人たちに見せられないというのが寂しいと思うので。赤字になっても僕が怒られればいいだけの話なので。視聴者の興味を減らしてしまうことを今はしたくないですね」