「空白の1日」。1979年に巨人入りした江川卓氏(時事通信フォト)

「空白の1日」。1979年に巨人入りした江川卓氏(時事通信フォト)

 他にも、初代楽天監督の田尾安志氏が江川氏をヘッドコーチで招聘しようとしたり、2012年オフには巨人の清武英利代表(当時)が「渡邉(恒雄)会長が翌年のヘッドコーチに江川氏を推した」と記者会見で話したりしたこともあった。

「2009年のシーズン中には、ボビー・バレンタイン氏に代わる来季のロッテ監督として名前が挙がったこともありました。判明しているだけでいくつもあるわけですから、今まで相当数のオファーを断ってきたのでしょう。それは江川さんの信念があるからです」(前出の球界関係者)

コーチを経由せずに監督として成功する人も

 昭和の頃はコーチ経験なしでの監督就任は頻繁にあった。しかし、平成の中期あたりから二軍監督を経て成功するケースが見受けられるようになり、いきなり監督になる例は少なくなった。

「それでも、落合博満さんはコーチを経由せずに2004年に中日の監督になって8年間で4度の優勝をしていますからね。それぞれタイプがありますから、コーチには向かなくても監督なら成功できる人もいます。江川さんもコーチには向いてないと自分で判断したのでしょう。金銭面で考えても、コーチでは大幅に年収が減ってしまう。一度現場に戻れば、次に解説者としてメディアの世界に帰ってきた時、元のポジションは確保できない。江川さんほどの大物になると、コーチはハイリスク、ローリターンなんです」(前出の球界関係者)
 
 コーチ打診の噂はあったものの、結局、江川氏は1987年限りで巨人のユニホームを脱いで以降、36年間一度も現場に戻っていない。

「昭和の頃と野球はだいぶ様変わりしていますし、もし江川監督が誕生しても、いまの野球にマッチするのかという懸念もあるでしょう。ただ、解説者としてずっと野球を見てきましたし、それほど不安視する必要はないのでは。江川さんは頭のいい人ですから、対応できると思いますよ。今年、阪神の岡田彰布監督が古巣に15年ぶりに復帰して優勝しました。温故知新でポジションを固定させるなど昭和の野球の良い面も取り入れた。現代野球に合わせながら、昭和の良さを組み込める江川さんの采配を見てみたい人は多いでしょう」(前出のベテラン記者)

 9月23日更新の高橋尚成氏のYouTubeチャンネルで、江川氏は「(監督候補に)名前が挙がることは非常に光栄」「(就任については)タイミング」と話した。落合博満氏はじめ、対戦した打者は口を揃えて「ナンバーワン投手は江川卓」と言う。球史に名を残す野球人が、指導者になる機会はあるのか、はたして──。

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