スポーツ

【藤井聡太八冠】孫の活躍を誰よりも喜んだ祖父との別れ 祖母は「生きていたらどれほど喜んでくれたことか」

藤井聡太(写真/共同通信社)

祖父との別れを経験している藤井聡太(写真/共同通信社)

 次々と記録を塗り替える将棋界のユニコーンは、最初の挑戦で全タイトル制覇という偉業を達成してみせた。しかし、そんな彼が人知れず悲しみを抱え戦いに臨んでいたことは明かされていない。新王者の異次元の強さを育んだ祖父母の愛情と別れ──。

 前傾姿勢のまま、盤上に向けた神経を研ぎ澄ます藤井聡太竜王・名人(21才)に対し、頭をかきむしり、しきりに首をかしげながら盤面と虚空を交互ににらむ永瀬拓矢王座(31才)。対照的な2人の姿は、歴史的な一戦の終わりが近いことを物語っていた。

 苦悩しながら最後の足掻きをみせていた永瀬王座がついに、脱ぎ捨てていた羽織に袖を通し、居住まいを正して「負けました……」と投了を告げる。対局開始から約12時間、将棋ファンだけでなく日本中が注目した藤井の偉業が達成された瞬間だった。

 10月11日、第71期王座戦五番勝負第4局で永瀬王座に勝利し、前人未到の八冠制覇を成し遂げた藤井。長い将棋の歴史のなかでタイトルを独占したのは藤井が4人目となる快挙で、直近では1996年の羽生善治九段(53 才)までさかのぼる。現在は羽生九段のときよりもタイトルがひとつ増えており、八冠達成は史上初だ。

 2016年9月、史上最年少の14才2か月でのプロ入り以来、天才の名をほしいままにした藤井が名実ともに将棋界の頂点に立った。わずか21才での偉業達成に列島が酔いしれ、令和の天才への惜しみない賛辞が多くのメディアに躍った。

 希代の天才棋士を支えてきた家族の感慨もひとしおだろう。特に藤井は父方、母方双方の祖父母にかわいがられて育っただけに、八冠獲得の喜びはひときわ大きいはずだ。だが母方の祖父である訓一さんは、藤井のプロデビュー前の2016年2月に肝臓がんで他界。当時中学生だった藤井は病床の祖父を見舞うたびに、涙ぐんでいたという。

 もうひとり、藤井の成長を見守り続けたのが愛知県刈谷市に住む父方の祖父だ。祖父宅の近隣住民が語る。

「聡太くんの父方のおじいちゃんである英昭さんは、昔はよく近所の公民館などで行われる将棋大会に参加していましたが、腕前はほかの参加者と同じで普通でしたね。聡太くんがマスコミで紹介され始めた頃、庭いじりをしていた英昭さんに『立派なお孫さんですな』と声をかけたら、うれしそうに『孫の努力がすごいんで。私らは見守っているだけです』と言っていたのを覚えています」

 そんな祖父だけにさぞかし孫の偉業を喜んでいるだろうと思いきや、別の近隣住民は意外な言葉を口にした。

「英昭さんは責任感のあるしっかりしたかたで、孫のことを自慢するでもなくひっそりと静かに暮らしていました。日曜日になると丁寧に庭の木々や盆栽の手入れをする真面目なかたでしたよ。ところが昨年、体調を崩して入院し、そのままお亡くなりになったそうです」

 英昭さんの自宅を訪れると、妻の朋江さんが言葉少なにこう語るのだった。

「夫は去年の夏に亡くなりました。もう1年が過ぎました……」

 孫の活躍を誰よりも喜んでいたはずの祖父だが、八冠達成の瞬間をその目で見ることはできなかった──。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン