左から長嶋茂雄氏、川上哲治氏、王貞治氏
このシーズン、ボクは初の三冠王を獲りましたが、これまで選手権ではシリーズ男(MVP)にはなったことがない。V9を達成したこのシリーズでもホームランを2本打ちましたが、その都度目立つ選手がいた。それがジャイアンツの強さでもありました。
この時のシリーズ男はシーズン中は不調だった堀内(恒夫)でした。ジャイアンツは1敗したあと4連勝で日本一になりましたが、堀内は3試合に登板し2勝0敗。打つほうでも大活躍。第2戦ではリリーフでピンチを切り抜けると延長11回に決勝タイムリー。第3戦では投げては完投、打ってはホームラン2本ですからね。
このシリーズは堀内が先発しない試合ではリリーフに回り、堀内、高橋一三、倉田誠の3人しか投げなかった。先発が足りないはずの投手陣に助けられて達成したV9でした。
長嶋さんはじめ、森(祇晶)さんや黒ちゃん(黒江透修)もV10ができなかった翌年(1974年)に引退しています。他のプロスポーツも同じですが、体を張って戦うため同じ時代がそう長く続くわけではない。
そう考えるとV9は凄いことだと思うが、チームの限界だったともいえます。
聞き手/鵜飼克郎(ジャーナリスト)
(第2回に続く)
※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号
