(写真/NHK提供)

戦後の大スターで“ブギの女王”と呼ばれた笠置シヅ子をモデルにしたヒロインを演じる趣里(写真/NHK提供)

「親の七光り」みたいな部分はまったく感じさせない

 第15話(10月20日放送)では、升が演じる社長のもとに、趣里演じるスズ子が怒鳴り込んでくるシーンがあった。

「普通の俳優だったら、ああいう振り切った演技はなかなかできません。振り切るところまで振り切ってしまうと、ハマらずに撮り直しになるケースもあります。でも趣里さんの場合は、振り切った演技をしてもやりすぎた感じはなく、しかもどこか笑ってしまうようなところがある。そういう演技ができるのは、天性のものだと感じます。そして見えないところで相当な努力をしているはずです」

 劇中ではまだダンスが下手だという設定だが、趣里は4歳から始めたバレエでロンドンに留学をしたほど本格的に学んでいて、怪我によって断念した過去がある。そして彼女を語る上でついてくるのが、両親が水谷豊と伊藤蘭ということだ。升はこう続ける。

「僕の中では趣里さんは『親の七光り』みたいな部分はまったく感じさせないまま世に出てきた印象です。ご本人も、ご両親も、2世ということをなるべくクローズアップされないようにしてきたのでしょう。

 僕は『相棒』でお父さんの水谷豊さんと何度か共演させていただいたし、お母さんの伊藤蘭さんともドラマで共演させていただいたこともあります。でも、『ブギウギ』の現場で趣里さんにご両親のことは話しませんでしたし、趣里さん自身も言ってきませんでした。彼女の中では『私は私』という思いもあるでしょうし、自分の力でここまで来たという自負もあるでしょう。なのであえてご両親の話題を出す必要もないんです」

『ブギウギ』の撮影現場は、歌劇団の団員をはじめ若い女性が多く出演しているため、升にとっては「ちょっと照れくさいんです」という。

「僕はなかなか彼女たちに目を合わせられないので、橋本じゅん(歌劇団の林部長役)とかと一緒にオジサン同士で固まっています(笑)。女性陣は一緒に稽古に励むシーンも多く、レビュー(歌とダンスのショー)のシーンのために実際に一生懸命練習をしているので、どんどん仲良くなっていました。和気あいあいと楽しそうに盛り上がっていて華やかな雰囲気です。

 趣里さんや蒼井優さんはバレエ経験者ですし、OSK(梅丸少女歌劇団のモデルとなった歌劇団)の現役メンバーの方々も団員として多く出演していますから、彼女たちによるレビューのシーンは本格的で素晴らしいですよ。

 僕が出演するのは大阪編だけなので、スズ子が東京に出てからどのような展開になるのかは具体的には知りません。モデルとなった笠置シヅ子さんは、スター歌手になった後にも晩年まで自分で決断しながら様々な方向転換をしてこられた方なので、スズ子の物語がどのように描かれていくのか、楽しみにしています」

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