2024年で引退から半世紀となる(時事通信フォト)

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24時間、野球漬けだった

 V9巨人を率いたのは名将・川上哲治監督。長嶋氏はこう評していた。

「ボクはよく叱られました。ワンちゃんが叱られるのは見たことがないんだけどね。川上さんは“長嶋を怒っておけばみんな気を引き締めるだろう”と思ったのでしょう。とにかくレベルが高いことを要求する人で、それに応えようとする我々がいた。この両方が揃って、あの常勝球団ができた」

 1973年にはV9を達成したが、ペナントレースが佳境を迎えた10月に長嶋氏は右手薬指を骨折してしまう。長嶋氏は、「(骨折は)ボクの不注意です」と口にし、まだ悔やんでいる様子だった。南海との日本シリーズは右手に包帯を巻いたまま一塁ベースコーチに入ることしかできなかった。

 オフには川上監督から“後を継いでほしい”と打診があったが、「なんとかもう1回、日本シリーズで打席に立ちたい」という思いから現役を続行。ただ、翌年はライバルチームの進化もあり、ついに優勝を逃す。

 まだ38歳だったが、川上監督から改めて後任監督となるように命じられたという。

「ジャイアンツの監督は他とは違う重みがあるからね。2年連続の打診を断わるわけにはいかず、受ける決意をしました。ただ、選手権のあの雰囲気をもう一度味わいたいという気持ちもありました。それくらい、魅力があったよね」

 目を細めながら、「24時間野球漬けだったなぁ」と懐かしんだ長嶋氏は、こう締めくくった。

「球界全体のレベルが上がって、V9当時の巨人のように突出したチームは出にくくなった。V9は、いつまでも色褪せない栄光でしょう」

 その長嶋氏はつい先日、東京ドームでの巨人のファンフェスタに登場し、阿部慎之助・新監督や選手たちに向かって、「来年は絶対勝とう! 勝つ、勝つ、勝つ!」と激励。冒頭のメッセージの通り、気持ちは栄光のV9時代と〈全く変わりはない〉ことを証明している。

 長嶋氏にとって節目の年に、巨人は栄光を取り戻せるか。その復活を誰よりも願っているのは、長嶋氏その人に違いない。

【プロフィール】
鵜飼吉郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。編集プロダクションを経て、ジャーナリストとしてスポーツ、社会問題などの幅広い取材活動を行なう。著書に『巨人V9 50年目の真実』など。

※週刊ポスト2024年1月1・5日号

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