新スローガンに「A.R.E. GOES ON」を掲げ、連覇に向けて始動した阪神。38年ぶりの日本一の立役者となった岡田彰布監督(66)の手腕に引き続き注目が集まるが、すでに“連覇の先”を見据えた動きも出てきた──。
「平田で勝てるんか」
入団したばかりの若虎戦士が集った新人合同自主トレで、岡田監督はこう訓示した。
「新しい、強いタイガースのスタートは今年からやと思うんで。その一員になれるように頑張ってもらえたら」
目指すのは球団初のセ・リーグ連覇、2年連続日本一だが、岡田監督は就任当初から「2年で辞める」と公言してきた。本当に“ラストイヤー”となるのかも注目を集めている。ある阪神OBが指摘する。
「岡田さんは去年のシーズン中もずっと『しんどいわ』と言っていた。連覇して勇退したいというのは本音でしょう。
問題は後釜ですね。岡田さんを監督に抜擢した角和夫・阪急阪神ホールディングス会長は、岡田さんと同じ早稲田大出身の大先輩で、岡田さんは角会長から後継者の育成を託されていますから」
阪神の次期監督人事には、球団と親会社、グループ持ち株会社の“綱引き”が存在する。元球団職員が説明する。
「阪神球団の親会社は阪神電鉄で、その上に持ち株会社の阪急阪神ホールディングスがある。ただ、阪急は球団を手放した過去もあってNPBからの信認がないため、これまで監督人事は基本的に阪神(球団・電鉄)が決めてきました」
しかし、その原則が覆ったのが一昨年の“岡田就任”だったという。
「当時、球団のフロントは二軍監督だった平田さん(勝男・現ヘッドコーチ、64)の就任を既定路線としていましたが、阪急の角会長の『平田で勝てるんか』の一声で岡田監督になった。阪神のフロントは平田さんならコントロールしやすいが、阪急側は和気あいあいとした雰囲気の平田さんではチームが緩むという危機感があったようです」(同前)
2001~2004年に球団社長を務めた野崎勝義氏は、「後任人事は岡田監督の意見が尊重されるでしょう」と指摘する。
「前任監督が後継者を指名する権利は本来ありませんが、阪急側は自分たちが推した岡田監督が前に出るなら一歩引くだろうし、阪神側もファンが岡田監督についているので無下にはできない。岡田監督の推薦や指名というのが、どちらにとっても丸くおさまるかたちでしょう」
前出のOBが続ける。
「昨年の日本一は平田ヘッドの功績も大きかったとはいえ、平田ヘッドは岡田さんと同世代。阪急の角会長から託されたのは“後継者”の育成であり、岡田さんは次の世代にバトンを渡すことを考えているはずです」
そうしたなかで関係者の注目を集めたのが、元日のスポーツ紙での岡田監督の発言だ。日刊スポーツで元監督の吉田義男氏(90)から後任人事を問われ、こう答えた。
〈いきなりはあかんと思うよ。ある程度ね、コーチとかなんかでユニホーム経験せんと〉
この発言で後任監督の最有力候補が絞られたという。虎番記者が語る。
「今岡真訪・一軍打撃コーチ(49)の昇格です。49歳ながら、阪神の二軍コーチやロッテの兼任コーチも含めて指導者歴8年の実績がある。それに、技術を押し付けるのではなく、岡田監督がモットーとする“選手の能力を引き出す指導”を継承しています」