年寄名跡襲名時の「誓約書」
今回、相撲協会は北青鵬が2人の後輩力士の顔面に平手打ちをしたことやほうきの柄で尻を叩いたこと、睾丸を平手打ちしたことなどが認められたとし、宮城野親方は暴行を把握しながら報告せず、協会の調査に外部者を関与させるなどの妨害をしたとしている。若手親方が言う。
「弟子の暴力事件だけなら一階級の降格処分で終わるところでしょう。宮城野親方は委員なので、主任に降格させられるだけで済んだ。しかし、問題になったのは暴力行為があったにもかかわらず、北青鵬の初場所途中休場の原因をケガだとしていたこと。報告義務違反は厳罰になる。おまけに現役時代から奔放な言動で執行部から睨まれ、年寄名跡襲名の際は“ルールやマナーを逸脱しない”といった内容の誓約書にサインまでさせられている。今回の行為がこの誓約書に抵触するのかが注目されていた」
宮城野親方は理事長として相撲協会のトップに立ちたい野望があるといわれてきた。今年初場所後の理事改選での出馬説もあったが、最後は断念。モンゴル出身親方などを結集して、貴乃花親方の「貴の乱」(2010年)の再現をしようとしたが、足並みが揃わなかったといわれている。相撲担当記者は言う。
「執行部との権力闘争に敗れて失脚した貴乃花親方を反面教師にするどころか、後を追っているようにしか思えない。年功序列が基本の相撲協会で飛び級を狙って執行部の反発を買ったし、今回の暴力問題も貴乃花部屋と同じくおかみさんが部屋に同居せず管理が行き届かなかったのが一因に見える。弟子を下積みから育てようとした貴乃花に対し、白鵬は高校や大学にパイプを作って即戦力を入門させるという弟子育成の方針こそ大きく違いますが、それ以外は同じ道を辿っている」
貴乃花親方は北の湖理事長や大鵬親方を後ろ盾に協会内で出世を果たし理事にもなったが、北の湖理事長が亡くなると失脚。横綱・日馬富士の暴行問題で執行部との対立が先鋭化し、2018年1月に理事解任決議が承認されると2階級降格して役員待遇となった。さらに理事選に出馬・落選したことで協会の規定で委員となり、同3月には弟子の暴力事件で2階級降格となり平年寄に。3か月で5階級降格を経験している。