やみくもに飲めば良いというものではない

やみくもに飲めば良いというものではない

効いていない薬は「ただの毒」

 体に負担をかける「リスクのある薬」を一掃したら、次は「のんでも効果のない薬」を減らしていくべし。

「『鎮痛薬をのんでもいっこうに頭痛がおさまらない』『降圧剤を服用しても血圧が高いまま』などと言って外来に来る患者さんは少なくありません。そうした人たちには『効いていない薬はただの毒です。やめていきましょう』とアドバイスしています。効果があるならばのむ意味がありますが、そうでない場合、副作用のリスクが高まるうえ、医療費もかさむだけ。減らすことを検討すべきです」(松田さん)

 効果の有無の判断のためには、健康診断の数値ではなく、その薬をのむことによって、どのくらい病気が予防できるのかを正しく理解する必要があり、それが「正しい減薬」への第一歩となる。

「例えば『スタチン系製剤』に代表されるコレステロールの薬は、血管病を予防する目的で処方されますが、中高年の女性で特にそのほかに病気のリスクのない人はそもそも心筋梗塞になる可能性が極めて低いため、薬をのんでコレステロールの数値を下げることにはほとんど意味がないことが明らかになっています。

 高血圧や糖尿病などの持病がない人なら、約300人に1人の割合で効果があるだけ。のまないという選択肢も視野に入れた方がいいでしょう」(宮田さん)

 効果が見込めず「毒」に変わる可能性のある「効果のない薬」に加え、「目的不明の薬」も減薬の対象になる。宮田さんが続ける。

「残念ながら、『以前から処方されていたから』『何かしら薬を出さないと患者が納得しないから』などと、あやふやな理由で薬を処方している医師は少なくありません。

 実際に『足がむくんでいる』という理由で利尿薬を処方され、のみ続けていた高齢の女性がいました。足の静脈の障害から薬の副作用まで、むくみの原因はさまざまですが利尿薬が効果的なのは、心不全に起因するむくみなど一部だけ。むくみの原因を正しく評価しないままに利尿薬を使用した場合、脱水症状に伴う副作用で立ちくらみや低血圧を引き起こす弊害すらあるのです」

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