ヤクザの怪文書やSNS投稿には、直接的に脅すような文言は少なく、言葉遣いは古めかしい(イメージ)

ヤクザの怪文書やSNS投稿には、直接的に脅すような文言は少なく、言葉遣いは古めかしい(イメージ)

怪文書に見る誹謗中傷の“言葉遣い”

 山口組分裂時、傘下組織の組員らからは、ラップでディスられたような内容の愚痴を聞いたりもしたが、だからといって大っぴらに言う者はいなかった。それを下っ端の組員が日本最大勢力を誇る暴力団の組長を揶揄したのだ。住吉会としても見ぬ振りはできなかったのだろう、この組員は破門となった。しかしこの組員はその後、組に復帰。2022年2月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、現在服役中だ。

 同じような中傷が大物政治家や党の派閥の長に行われたなら、メディアも報道するところだろうが、そこはヤクザだ。メディアが取り上げることもなければ、業界と関わりのない一般人が知る由もない。ヤクザの組長や幹部に対して誹謗中傷が起きるのは、敵対する組同士のいざこざだけでなく、利権や金が絡んでいる場合が多い。だが下手に大っぴらに非難したのがわかればどこで制裁されるか、自分たちの身さえ危うくなる。だから出所不明の怪文書が出回るのだろう。

 二言目には「てめぇ、このヤロー」と怒鳴り、「殺すぞ」と脅すイメージが強いヤクザなら、誹謗中傷も辛辣で感情がむき出しのストレートなコメントが多いのではと想像するが、SNSなどで目にする投稿や怪文書には、「天誅が下る」「盗賊団」「外道」「極道にあらず」といった古めかしい表現や、覚せい剤依存を引き合いに「ポン中」や「ポン引き」といった言葉が並ぶ。

 そこにオリンピックの選手たちに浴びせられたという「ゴミ」「クズ」「クソ」「バカ」「死ね」「人間やめろ」「消えろ」という言葉は、ほとんど見ない。前述した組員は「そんなの毎日、上の者から言われ、子分らに言っていることだ。日常会話みたいなもんで珍しくもなんともない。気にしていたらヤクザとしてやっていけない。まぁ知らないヤツに言われたらキレるかもな」という。パワハラありきのヤクザ世界は誹謗中傷も一般人とは違う。古めかしい言葉が並ぶわけがわかった気がする。

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