横山剣(右)と岩崎宏美が「歌謡界のレジェンドとの思い出」を振り返る
『週刊ポスト』2025年5月2日号で約3年にわたる連載を終えた横山剣氏の「昭和歌謡イイネ!」。その総括として、今号では横山氏が歌手生活50周年を迎えた岩崎宏美氏との対談が実現。前編では、2人が通った堀越学園、岩崎氏がグランドチャンピオンに選ばれた『スター誕生!』などが話題になったが、後編は偉大な歌手や作曲家など、歌謡界のレジェンドについてたっぷり語り合う。
阿久悠先生が代筆した恋文
岩崎:剣さんは、生前の筒美(京平)先生とは何かご縁がありました?
横山:実は、僕がヴォーカルを務めたダック・テールズというバンドが1984年にデビューした時、最初のシングル『真夜中のサリー』を作曲してくださったのが、京平さんだったんですよ。
岩崎:あれっ、剣さんは作曲家志望だったのに、何でまた、職業作曲家の提供曲を歌ったの?
横山:当時は周囲からも、同じ疑問を呈されました。でも、ずっと目標としてきた京平さんの紡ぐメロディーを、一度は歌ってみたかったんです。
岩崎:憧れの対象だったんですね。
横山:ちょうど、ダック・テールズのディレクターが、京平さんの弟の渡辺忠孝さんでした。「ちょっとお兄さんに頼んでいただけませんかね」と言ったら、あっさり夢が叶っちゃった。
岩崎:それはよかった。素敵な曲でしたか。
横山:はい。本当に勉強になりました。ちなみに、京平さんから届いたデモテープには「あとはお好きにおやり」という直筆のメッセージが添えられていたんです。
岩崎:「お好きにおやり」って(笑)。
横山:『二重唱(デュエット)』を始め、岩崎さんはデビューから8作連続で阿久悠作詞・筒美京平作曲のシングルをリリースしています。
岩崎:阿久先生もまた、天才でしたね。3か月に1回、新曲の歌詞が送られてくるたびに「何でここまで私たちの気持ちがわかるんだろう」と不思議だった。「何か調べてるんじゃないの」とすら思いましたから(笑)。
横山:こっそり日記でも読んでるんじゃないかとか、疑っちゃう(笑)。
岩崎:あれは亡くなる直前でしたが、阿久先生にその秘密を聞いたことがあるんですよ。