首相指名選挙を控える自民党総裁・高市早苗氏(撮影/JMPA)
女性初の自民党総裁に就いた高市早苗氏は、勝利後の会見で「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いて参ります」と、力強く語った。「女性の活躍」が声高に叫ばれる中、第一党の総裁となった高市氏はついに「ガラスの天井」を破り、日本初の女性リーダーになるか注目されている。しかし、その道はいまだ前途多難だ。彼女が40年をかけて突破したガラスの天井は「二枚天井」なのかもしれない。【全4回の第4回。第1回から読む】
「交際0日婚」で「一度の離婚、二度の結婚」
高市氏は“一度目の結婚”後は戸籍上の姓ではなく、旧姓で政治活動を行っている。高市氏が総理に選出されれば、日本初の「ファーストジェントルマン」になるのが夫で元衆議院議員の山本拓氏(73才)だ。ふたりは2003年の衆院選に高市氏が落選したのち、自身の秘書が山本氏に雇用されたことをきっかけに知り合った。事務所の備品を引き取ってもらった際、「あなたも引き取らせてください」と求婚され「交際0日婚」したのは有名な話だ。
再婚の山本氏には連れ子が3人おり、初婚の高市氏はいきなり3人の子持ちとなった。そんなふたりは2017年に「政治的スタンスの違いが大きい」として協議離婚するも、2021年に再婚し、山本氏が高市姓となった。政治評論家の有馬晴海さんが語る。
「高市さんがその年の総裁選に初出馬した際、当時“元夫”だった山本さんが推薦人になり懸命に票集めをしたそうです。それがきっかけで復縁したのですから、それほどお互いの人間性に惹かれ合っているのでしょう」
国会議員時代から山本氏と馬が合い、仲よくしていたという国際政治学者の舛添要一さんが語る。
「彼はいい意味で政治家らしくなく、議員バッジをつけなければ“そのへんにいる感じのいいおじさん”です。一緒に食事するときも気を使わせないし、漫画やアニメが好きで冗談も上手。とにかく話していてとてもいいやつなんです」
昨年の衆院選後に脳梗塞で倒れた山本氏は現在、介護が必要な状態と報じられている。だが、それでも彼にしかできないファーストジェントルマンとしての支え方を期待する声もある。
「基本的にファーストジェントルマンはファーストレディーと同様、外遊などで妻を支えます。山本さんが外遊できる状態かはわかりませんが、元国会議員で経験豊富、人脈もある彼なら、妻が困ったときに的確なアドバイスができるはず。日本のファーストレディーにありがちな〝つけ足し〟的な役割だけでは終わらないでしょう」(有馬さん・以下同)
山本氏の介護は現在、高市氏が担っているとされる。進次郎氏や林氏のような世襲議員ではなく、一般家庭からの叩き上げで総裁のいすに座った高市氏が、「夫の介護」という、多くの女性国民が直面する体験をしていることは、国民生活への理解につながるはずだ。
「本人から聞きましたが、彼女は両親の介護で東京と奈良を往復していた経験も持っています。自身の体験から、介護家庭でもゴミを出しやすくするよう、行政に意見していたこともある。高市さんは、自分の暮らしの中から女性の抱える課題を見つけて政策を編み出し、問題を解決できる人だと期待したエピソードです」