台湾問題についても首脳間で詰めた話し合いが行なわれたという(時事通信フォト)
政権発足直後にトランプ大統領との日米首脳会談、習近平・国家主席との日中首脳会談に立て続けに臨んだ高市早苗・首相。10月30日の午前中に韓国で開催されたAPEC首脳会議に出席した際は、台湾代表として会議に来ていた林信義・総統府資政と挨拶を交わし、午後5時から首相就任後初の日中首脳会談に臨んだ。その夜、自身のXには習主席との首脳会談の写真より先に〈APEC首脳会議前に、控室で台湾の林信義総統府資政と挨拶を交わしました〉と林氏との写真をアップした上で、翌日、その林氏と会談。Xに会談時のツーショット写真を再びアップ。習主席に対し“台湾有事は看過できない”との姿勢を強く主張するかのような行動だったとも見られている。
その一方で、米中のトップ外交による両大国の“緊張緩和”にも注目が集まった。台湾有事が懸念されるなか、米国は極東の安全保障のために動くのか、日本は中国の拡大を止められるのか。そうした懸念に対応するための高市外交の舞台裏での仕掛けを、内部証言とともに紐解く――。【全3回の第2回。第1回から読む】
米国の“離反”を未然に防いだ
「2027年台湾有事」の情報は、米CIAのウィリアム・バーンズ長官(当時)が2023年の講演で、「習近平主席が2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に命じたことを指すインテリジェンス(情報)を把握している」と語って明らかになった。
最近の習主席による軍首脳部粛清で計画は遅れるとの見方もあるが、中国は昨年、今年と台湾周辺で大規模な軍事演習を実施、さらに台湾周辺に集中する国際海底ケーブルが断線し、ネット回線の速度が大きく低下する事故も相次いでいる。
「中国の情報封鎖工作の一環」と懸念した台湾側は10月28日に台北で国際会議「台湾・欧州海底ケーブル安全協力フォーラム」を開き、海底インフラの安全強化を訴えるなど、有事は静かに進行しているように見える。
そうした情勢のなか、日米台の外交・安保専門家の間で囁かれているのが、トランプ大統領が「台湾を見捨てるのではないか」との懸念だ。
米国のバイデン前政権は台湾有事を重視し、台湾に17回武器を売却するなど防衛力増強に協力してきたのに対し、トランプ大統領は台湾が求めた総額4億ドル(590億円)以上の軍事支援の承認を見送るなど、台湾支援に消極的だ。今年8月には中南米訪問の途中で頼総統が米国に立ち寄るのを拒否している。
中国情勢に詳しい富坂聰・拓殖大学海外事情研究所教授が語る。
「中国の台湾侵攻、中台統一に関して、米国のバイデン前政権は台湾を守る姿勢を示してきましたが、トランプ大統領は台湾を守ることを投げ出していると言っていいほどの状況です」
