息子・陽一氏と(2016年。撮影/太田真三)
まだインターネットが普及していない頃、「世界」を知る術は限られていた。そんな時代に、紛争地のルポや各国の要人インタビュー、そして独自の情報網によるレポートを日本人に届けたのが、作家・国際ジャーナリストの落合信彦氏だ。84歳で永眠した同氏の先見性は今もなお、全く色褪せていない。【全3回の第3回】
ケネディ大統領暗殺の真相に踏み込む
米国のトランプ大統領が昨年3月、ジョン・F・ケネディ元大統領の暗殺事件をめぐり、それまで非開示だった記録文書の一部を公開させて注目を集めた。
この暗殺をめぐる謎をいち早く追ったのが落合氏だった。1977年に刊行されてベストセラーになった『二〇三九年の真実』は落合氏の代表作である。
1963年のケネディ大統領暗殺は、当時、事件を調査したウォーレン委員会が元海兵隊員であるオズワルドの“単独犯”と結論づけたが、落合氏は現地取材で事件の謎を追った。著書のタイトルは、ウォーレン委員会がまとめた報告書の証拠資料が「2039年まで非公表」と決められたことに由来する。
『二〇三九年の真実』で指摘された謎や不審点は数多くあり、「ダラスでの大統領パレードのルートが、直前になってビル群の建ち並ぶ“狙撃しやすいルート”に変更された疑い」や「80メートル離れた標的を狙い撃ったはずのオズワルドが、海兵隊時代の射撃テスト成績は合格ギリギリだった事実」などが摘示された。
犯行を否認していたオズワルドが事件の2日後、拘置所に移送される車に乗る直前にナイトクラブ経営者に射殺されるなど、謎だらけの事件の背後に見え隠れするのはCIA、FBI、マフィア、そして軍産複合体ではないか──落合氏は、泥沼化するベトナムからの撤退を決断しようとしたケネディ大統領を本当に狙ったのが誰か、というところまで踏み込んだ。
