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エロ停滞感ある日本 性文化で中国に抜かれたと女性作家実感

「日本の性文化は中国に抜かれた」と北原さん

文筆家で女性用アダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのり氏がお届けする「ガラパゴス化した日本のセックス」。最終回はGDPだけでなくセックス事情でも日本を追い抜いた中国のお話。

* * *

2011年11月に中国広州で行われたアダルトグッズ見本市に行ってきました。言うまでもなく、中国は世界の工場。世界のアダルトグッズのほとんどが中国で作られ、私たちのセックスライフを支えてきたわけですが、ここにきて中国人が「作る人」でなく「使う人」になりはじめています。

見本市は広州市の中心にある国際展示場で行われました。世界各国からの業者はもちろん、一般市民に開かれたイベントです。共産圏ですから、こんなイベントも政府公認。入り口には「祝性文化節!」と大きく書かれた大きなアーチが飾られ、開場の10時には既に長蛇の列ができ、1時間待たなければ中に入れないほどでした。それはまるでバブル時代のモーターショー並。6割が男性客ですが、女性も少なくなく、カップルもよく見かけました。

この手のイベントは日本でも10年ほど前に一度だけ行われたことがありますが、中国では上海、広州、マカオなどで年に数度行われるポピュラーなイベントに成長していました。多くの中国人が来年のバイブの新作に群がり、「このバイブの使い方は?」と熱心に聞いていたり、水着姿のモデルの撮影がはじまるとヤンヤヤンヤとみんなで盛り上がる。

なんていうか……とても健康的な雰囲気です。元気になるお茶や、加藤鷹がプロデュースするローションや、クリトリスの裏側だけを刺激するバイブなどなど、数百のメーカーがひしめく会場の熱気に、私は圧倒されました。

こんなの……日本で見たことないっ! というより、中国、ものすごく変わった。たくさんの人が豊かになっている。みんながギラギラと買い物しようとしてる。セックスのこと女も男も語りはじめようとしている。

イベントのあまりの熱気に疲れ、街に出ました。広州は世界の問屋街と言われていて、もちろんアダルトグッズの巨大な問屋街もあります。それは住宅街にあるショッピングモールみたいなところで、4畳ほどのスペースのお店が百軒近く並んでいました。

もちろんこういう場所も政府公認。さすが共産圏だわっ。どんなエログッズであっても政府公認の「保健器具」として扱われるものだから、なんだか買う方も使う方も、堂々としていられる気分です。また問屋街だけでなく、街中にも東京では見たこともないきれいなアダルトグッズショップが出来ていました。

まるで高級ブティックみたいな作りで、ファッション志向の強い人たちがオシャレな感じで買うバイブ屋。お金持ちっぽい中国人カップルが何人かゆったりとお買い物してた。 はぁ……中国、すごい。すごい勢いで、変化しているんだっ!

日本は今までアジアのエロ文化を率先してきました。まさに、Japan as No.1EROです。加藤鷹は英雄だし、蒼井そらを知らない中国人・台湾人はいないし、韓国の青年は日本のAVを見てセックスを知る。

一方、日本は、まるで見ていなかった。中国のことも、韓国のことも、台湾のことも。そして日本は独自のセックスカルチャーを発信し続けてきたわけだけれど、ここに来て見えるのは、ただただこの国のエロの停滞感と閉塞感です。

今や中国は世界のマーケットの中心にある。韓国のブランドはヨーロッパで市場を拡大し、台湾では書店で女性向けバイブを売っているところもある。そうだ、台湾では先日、女性タレントがバイブのことをテレビで話し話題になっていました。そう、凄まじい勢いで、本来ヨーロッパに比べコンサバであったアジアのセックス観が変わりつつあります。

根底にあるのは、セックスを男女同じように楽しみ、よりオープンに、より正直に語り、考え、真面目な仕事にしていこうという姿です。私が日本でなかなか感じられない、空気、です。

先日、ヨーロッパのバイブの説明書から、日本語が消えてました。代わりに中国語が入ってた。残念だわぁ、と思いながら、ま、しかたあるまい、とも思う。

エロとは文化そのもの。男とはこういうものだ、女とはこういうものだ、エロとはこういうものだ、と言いたがる人は多いけど、エロこそ、時代や文化や地域に限定されるものはありません。

そして今、日本のスタンダードのエロが、行き詰まってるのをバイブ屋として痛いほど感じます。競争ではないけれど、他の国に「追い抜かれ」ていくのを、実感してる。それで私たちのセックスが満たされているなら問題はないけれど、TENGAばかりが売れる一方、セックスレス率がずばぬけ、さらには女性用ステキなバイブがほとんど売れぬこの国で……女のアソコは枯れる一方じゃないか! と叫び、日本のガラパコス化するセックスについて大きく異を唱えて続けていきたいと思います。

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