スポーツ

高校野球大会の連投について金田正一と桑田真澄が激論交わす

 今年の夏の甲子園では、準決勝の前に初めて「休養日」が設けられ話題となった。休養日の設定は、連投を続けさせることで有望な選手の未来をつぶしているのではないか、という批判に応えた措置と言われている。

 400勝投手の金田正一氏と、小柄ながらPL学園、巨人と活躍し、現在は東京大学の硬式野球部で特別コーチもつとめる桑田真澄氏が、投手にとって多く投げることはよいのか否か、激論を交わした。

──現在の球界では「投手の肩は消耗品」という考え方から、「投げすぎると壊れる」といわれる。高校野球での連投も、かねてから批判の対象となっている。甲子園を制した者として、桑田氏はどう考えるのか。

桑田:高校野球は変えないといけないと思いますね。始まった当時のシステムが、未だに残っていますから。

 かつては学生野球の「上」、つまりプロがなく、極端にいえば甲子園で肩が壊れてもよかったんです。ボクだって高校で野球は終わりといわれたら、骨折しても突き指してでも投げますよ。でも今は大学や社会人、独立リーグにプロ野球、メジャーリーグまで子供たちの未来は広がっている。甲子園で壊れるわけにはいかないんです。もう少し大人たちが、子供たちの将来を考えた日程を組んであげないといけません。

金田:それで今年の夏の甲子園では、準々決勝の後に1日休みを作っただろう。ワシはこれで、「高校野球も終わりだ」と思ったね。批判を避けるために、お茶を濁しただけだ。高校野球というのは、連投、連投で各校が最後まで死力を尽くすからこそ、感動が生まれてきたんだ。それに1日ぽっち休んだところで、何かが変わるもんじゃない。

──金田氏は連投しても問題はないと?

金田:バカ者、ワシがどれだけ投げたと思っている(※5526.2投球回数は日本記録)。人間の体は、そう簡単には壊れやせんわい。

桑田:でも金田さん、ヒジが曲がっても腕が折れても投げようとする子は、今でもいるんですよ。それをメディアが煽って美談にしてしまうから良くない。そうやってダメになった選手を何人も見てきました。

金田:あれだけ甲子園で投げたお前自身は、壊れていないじゃないか。

桑田:僕は少しでも、体に違和感を覚えると投げませんでしたから。「根性無し」とか、「何サボってんねん」とかいわれましたけどね。理由は将来プロ野球選手になるため、壊れるわけにはいかなかったんです。だから予選の前には、1か月ノースローで過ごしたこともありました。

金田:甲子園の優勝はどうでも良かったのか。

桑田:そんなことありません、優勝は大事な目的でした。ノースローも優勝のためです。実際、1か月走り込んだことで肩の調子も良くなり、以前より良い投球ができるようになりました。

金田:よく監督が許したな。

桑田:普通なら「投げられない」といえば「もういらない」といわれる世界ですよね。だから言い出せなくて、ヒジや肩の爆弾が破裂してしまう選手が多い。PL学園の中村(順司)監督に理解していただいたのはありがたかったですね。

 すべては指導者の勝利至上主義が問題。よく「お前と心中だ」なんて話す指導者がいますが、本当に心中してくれる人なんていません。子供は壊れて終わり。監督がその後の人生の面倒を見てくれるかといえば、そうじゃない。だからちゃんと、壊れないように大人が子供たちの体を管理してあげなくてはなりません。

 もちろん勝利も大事ですが、学生野球では指導者の考え方を勝利至上主義から「人材育成主義」にシフトしていくことが必要です。

金田:ウ~ム、子供は確かにそうかもしれん。しかし最近は一人前のプロが、「肩は消耗品」とかぬかすだろう。愚の骨頂だよ。「100球肩」などといわれた江川(卓)の頃からだな、おかしくなったのは。最近は楽して金を稼ぐことしか考えない“野球ブローカー”が多くて哀しい。

 闘争本能をもって、ファンを魅了できるよう、登板したからには完全シャットアウトする気で投げないと。昔のピッチャーは皆完投してきたぞ。ワシだって1年で34試合、完投したんだからな。

桑田:僕は最高で完投が20試合ですから、やっぱりすごいですね。

※週刊ポスト2013年9月20・27日号

関連記事

トピックス

愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
資産2.8億円、配当収入年700万円の億り人・ペリカン氏が経験した大失敗 値動きの激しい銘柄に集中投資してリーマン・ショック時は8000万円の資産が4分の1に激減
資産2.8億円、配当収入年700万円の億り人・ペリカン氏が経験した大失敗 値動きの激しい銘柄に集中投資してリーマン・ショック時は8000万円の資産が4分の1に激減
マネーポストWEB
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
羽生結弦が主催するアイスショーで、関係者たちの間では重苦しい雰囲気が…(写真/AFLO)
《羽生結弦の被災地公演でパワハラ告発騒動》アイスショー実現に一役買った“恩人”のハラスメント事案を関係者が告白「スタッフへの強い当たりが目に余る」
女性セブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
『ここがヘンだよ日本人』などのバラエティ番組で活躍していたゾマホンさん(共同通信)
《10人の子の父親だったゾマホン》18歳年下のベナン人と結婚して13年…明かした家族と離れ離れの生活 「身体はベナン人だけど、心はすっかり日本人ね」
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン