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椎名林檎はW杯テーマ曲「NIPPON」で炎上商法を仕掛けたのか 

 NHKがW杯テーマ曲に選んだ椎名林檎の歌が賛否両論を呼んでいる。あなたはどう思う? コラムニスト・オバタカズユキが切り込む。

 * * *
 椎名林檎が歌うNHKのW杯放送テーマソング『NIPPON』。初めて聞いたときに、「場違いな気がする」と違和感を覚えた。

 その後、テレビで何度曲が流れても耳になじまない。で、みんなはどうなんだろうとネットの反応をチェックしたら、まさに賛否両論が渦巻いていた。曲の歌詞が右翼的かどうかをめぐって、だ。

 あらためて歌詞を検索して読んでみると、なるほどその出だしからして、〈万歳!万歳!日本晴れ 列島草いきれ 天晴〉と右寄りの人に好まれそうな単語の羅列になっている。〈この地球上で いちばん 混じり気ない気高い青〉という箇所も、サムライブルーに過剰な意味づけをしている。

 後半に出てくる〈淡い死の匂い〉や〈あの世へ持って行くさ〉という表現に対しては、「神風特攻隊を連想させられる」と危険視する声がある。私にはそこまでの連想力がないけれども、安倍政権下での日本の右傾化を心配している人がそのように警戒するのは理解できる。

 ただでさえ普段眠っていた愛国心が燃え上がるW杯の開催中である。そこで「国営放送」のNHKが『NIPPON』のような日本賛歌を流せば、一定数の日本人が「怖い」と反応して当然だ。同時にそうした日本人を、「だからブサヨは」と叩き始めるネトウヨなどが、一定数現れることもお決まりだ。この曲が「問題作」として騒がれることは、最初の放送前から分かっていたはずなのである。

 シンガーソングライターの椎名林檎が、どういう気持ちと事情で歌詞を書いたのかは知らない。ひさしくヒット曲から遠ざかっているので、実はちょっとした炎上商法を仕掛けたのかもしれない。いや、そもそもインテリ好みのブンガクっぽい言葉遊びを得意とする作詞家でもあるから、このたびのテイストは三島由紀夫でいくかな、くらいの軽いノリだったのかもしれない。

 クリエイターは、それが自身の倫理を勢い任せで逸脱するものでない限り、何をつくろうが自由だと思う。炎上商法だとしても表現手段の一つとして許容できる。けれども、私はこのような「問題作」をなぜNHKが平然と流しているのか、そこが解せない。

 念のためにしつこく確認しておくと、椎名林檎の『NIPPON』は、NHKのW杯放送のテーマソングだ。大会が終わってからも「サッカー関連番組で広く使用していきます」とNHKのサイトにあるが、あくまで前提は「サッカー放送のテーマ音楽」であり、「日本代表応援歌」ではない。

 なのに曲名がいきなり『NIPPON』でいい理由が分からない。「日本」にばかり目が向いている歌詞を、国際大会の放送の場で流す判断に頷けない。NHKのW杯中継は、日本戦以外の試合もたくさん中継する。盛り上がりを見せた外国同士の試合のエンディングに『NIPPON』が流れると、「おいおい、空気読んでくれよ」と言いたくなる。

 サッカーのW杯に引きこまれるのは、愛国心が刺激されるからだけではない。それまで何の関心もなかった外国について、選手たちのプレイや、実況・解説にはさみこまれるウンチクなどを通し、知り得る楽しさもある。他のスポーツの国際大会もそうだが、サッカーは特に「お国柄」を感じさせやすい競技だ。観戦するだけで自然と視聴者の「世界」が広がっていく。

 だから、その放送のテーマソングは、いつも無国籍な設定でつくられてきたと思うのだ。前回、2010年南アフリカ大会のテーマソングは、Superflyの『タマシイレボリューション』。声量のある女性ボーカルが「スタンダップ! モンスター~」と歌い上げたインパクトのある曲なので、まだ耳に残っている人も多いだろう。「スタンダップ!」と呼びかけられた「モンスター」の枠は、日本人選手限定ではなく、世界のすべての選手に開かれていた。

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