「親の財産を聞くのは不謹慎ではありません」と菅井敏之氏


――元バンカーの菅井さんのアドバイスだけに、説得力があります。

菅井:銀行だって1年間何の音沙汰もなく決算書しか渡してこないような会社にはお金を貸しません。その代わり、経理部の部長や課長が自ら銀行に足を運び、決算説明をしてくれるような会社なら、困ったときでも運転資金を融資しやすくなります。

 これは親子でも同じことです。親を金融機関だとすれば、あなたに融資してくれるかもしれないありがたい存在。そう考えると親に対する態度も変わってくるはずです。

――中には「親のお金なんかアテにせず、自力で資産を増やすぞ」と思っている子供もいます。

菅井:資産を増やすためには、自分の収入だけを頼りにしていたのでは難しい。40代、50代のサラリーマンの中には、自分の将来的な社内ポストも見え、自分のことを「将来性の低い赤字会社」だと思っている人もいるでしょう。

 でも、親会社である親がお金を持っているならば、現実としていずれ相続をすることになりますし、トータルで見たらプラスになります。

 銀行では親と子の資産を「連結する」考え方は当たり前のことです。子供が組む住宅ローンの審査がきびしいときには、親の資産を連結して見ることで「資産背景は十分」だと判断されるケースもありますからね。

 仮に、将来的に新しい事業をおこしたいとか、店を開きたい、妻がプチ起業を考えている……などの夢を持っているならば、多くの事業資金を安い金利で銀行から「調達」しなければなりません。

 その際、親の資産と連結ベースで審査してもらえば、調達できるかもしれないのです。将来の選択肢を増やす意味でも、親のいまの経済状態、資産内容を早めに知り、銀行を「味方」につけておくのは決して悪いことではありません。

――ゴールデンウイークで帰省したり、親が田舎から出てきたりしている人も多いと思います。家族で「お金」の話をするのには絶好の機会ですね。

菅井:家族みんなが安心して豊かに暮らすためには、隠し事のない“ありのまま”の「お金」を教え合うのが一番です。GWも後半ですが、休みの間にぜひ家族で将来のマネープランについても話し合ってほしいと思います。

●菅井敏之(すがい・としゆき)/1960年生まれ。1983年三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、金沢八景(横浜)や中野(東京)の支店長などを歴任。48歳のときに銀行を退職。アパート経営やカフェ経営で生計を立てる。2014年3月に発売した著書『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)は40万部のヒット。

●撮影/山崎力夫

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