1992年に実現した天皇の初訪中は、中国にとっては大きな成功例だった。
当時、中国は1989年の民主化運動を弾圧した天安門事件を受けて、欧米など西側諸国から経済制裁を受けていたが、天皇訪中が「制裁を打ち破る最良の突破口となった」と中国の銭其シン(「シン」は王偏に「深」の右側)元副首相(外交担当)はその後の回顧録で振りかえり、天皇訪中を政治的に利用した事実を認めた。
今の日中関係を考えれば、中国当局者も天皇の訪中はすぐに実現することは難しいと認識している。しかし、アピールし続けることが大事だと考えているようだ。同時に、天皇や皇太子以外の皇族をまず招待する可能性を模索しているという。
最近、共産党関係者は日本側の関係者との会談で「佳子さまなど若い皇室の方を、旅行のような形で中国に招待できないか考えている」と話したという。
若い皇室を突破口に、皇太子、天皇への訪中につなげたいとしているようだ。中国は再び、天皇を政治利用しようとしている。
※SAPIO2015年6月号