〈新しい文物を持って日本に渡ったわが国の人々は、土着社会の日本人を教化した。(中略)儒教の五経と絵画を教え、紙と墨の製造法を伝授した〉

〈わが国からの流移民が日本列島に渡り、先進技術と文化を伝授し、大和政権を誕生させ、古代飛鳥文化の成立に貢献した〉(国史編纂委員会編、一九九六)

 といった調子である。古代における朝鮮半島と日本列島の関係は、「交流」の歴史であるが、韓国は半島側の「文化的先進性」や「優越性」を前提に「伝授」したことを強調することが常だ。
 
 だから、韓国で教育を受けた韓国人には、日本文化に対する軽視や蔑視の態度が強くある。一方には日本人の行動様式に対する称賛の態度や感情があっても、その両者のズレが矛盾として自覚されることは少ないのだ。その劣等なはずの日本が経済的に成長し、自分たちを追い越してしまった。しかし、それは「自分たちが経験したような苦労とは無縁であるゆえに可能な成功である」と考えられやすい。
 
 近年は、アメリカなどグローバル社会で活躍している韓国人ビジネスマンも多い。彼らのなかには韓国の外にいるからこそ見えてくる日本文化の力や魅力に気付く者も少なくない。アメリカにいてもフランスにいても、自文化と日本文化との間には大きな差があることがよく分かる。

 しかし海外にいても、日本人たちは引っ込み思案で内向きに見え、一見無能に映る印象もある。「われわれ韓国人は優秀で、もっと成功してしかるべきなのに、なぜ日本が国際社会で認められるのか」という嫉妬の感情はここにも生まれる可能性があるのだ。

※SAPIO2015年11月号

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