その一方では、読売新聞など一部を除く新聞・テレビも、当初は財務省の還付案を批判することなく、そのまま垂れ流した。たとえば、日本経済新聞は9月8日付夕刊と翌9日付朝刊で、ほぼ同じ内容の記事を1面トップで掲載した。普通は翌日も1面トップにするなら新しい情報を盛り込むか、代わり映えのしない内容であれば準トップ以下の扱いにするものである。これではまるで財務省のPR紙だ。
また、朝日新聞は9月11日付朝刊で「消費税の還付案の利点生かす論議を」という財務省べったりの社説を掲載した。別の面に「2%還付 注文続々」「2%還付 四つの疑問点」という記事もあったが、新聞社としての意見や主張である社説があのような内容では、日経と大差はない。
さすがに日本新聞協会は9月17日に還付案の問題点を指摘して軽減税率制度の導入と新聞への適用を求める声明を発表したが、我田引水かつ遅きに失した感は否めない。「社会の木鐸」が聞いて呆れる鈍感さだ。
東京オリンピックの新国立競技場やエンブレムのデザインの問題と同じく、この負担軽減策をめぐる迷走も政治家・官僚・マスコミが問題の本質を理解しないまま実のない論議を続け、ずるずると解決を先送りしているだけである。
では、どうすればよいのか? 私は還付でも軽減税率でもなく、低所得層に対してアメリカの「フードスタンプ」のような食料品だけに使えるクーポンを年収や家族の人数に応じて配布する方法が現実的だと思う。そのほうが、複雑な制度設計をしたり、新たなシステムを構築したりするより、はるかに手っ取り早くてコストもかからないからだ。
※週刊ポスト2015年10月30日号