中国の経済状況が減速しているとも言われている中、10月19日、中国の7~9月期の実質経済成長率(GDP成長率)が6.9%と発表された。これは中国政府が社会の安定のために必要だとしている「成長率7%」を割り込んだものだが、専門家からは6.9%という数字の信憑性を疑う声も上がっている。リーマン・ショックの後のアメリカのGDP成長率がマイナス3%だったことから、中国も同様にマイナス3%程度と考える専門家もいる。
中国経済の失速は何をもたらすのか。まず思い浮かぶのが「爆買い」需要への影響だ。不況で中国富裕層の来日が減れば、大幅増益の家電量販店や大手百貨店の業績は悪化するし、ホテル、観光業もダメージは免れない。
それよりも心配されるのは、「市場」としての中国が機能しなくなることだ。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏が指摘する。
「中国経済の失速で今後は、日本から中国への輸出が減少するでしょう。特に輸出に頼ってきた鉄鋼、自動車、機械業界は厳しくなる。すでに8・9月の対中輸出額は前年比マイナスになっており、不気味な兆候です」
中国という「市場」が失われれば、影響を受けるのは日本だけではない。
「中国は世界最大の資源消費国であり、石油や石炭、鉄鉱石から農作物まで幅広く輸入している。その中国が減速すると、最初に資源輸出国の経済が回らなくなる。すでに鉄鉱石などを輸出するブラジルとカナダの経済が悪化しています。当然、世界最大の経済大国・アメリカもその影響を避けられない」(信州大学経済各部教授・真壁昭夫氏)