ライフ

医学部人気の上昇は続くが燃え尽きている研修医も少なくない

 大学入試で医学部人気が続いている。しかし難しい入試を突破しても、疲れ切ってバーンアウトする研修医も多いという。知られざる医者の世界をコラムニスト・オバタカズユキ氏が紹介する。

 * * *
 インフルエンザの季節も到来、塾や予備校の前を通ると、マスク姿の子供たちの姿をよく見る。受験生もいよいよ追い込みの時期だ。

 大学受験でいうと、医学部人気上昇が止まらない。特に私立大学医学部医学科の人気が高い。2015年度の一般入試志願者数は8.9万人と過去最多だった。合格倍率は18.4%と狭き門だ。

 入試偏差値も高騰しており、かつて「お金さえかければ子供を医者にできる」といったイメージのあった下位層の医学部はもはや存在しない。河合塾のデータによれば最低偏差値ラインは62.5だ。私立大医学部の大半は早慶の理系学部以上の難関校になっている。

 その要因は、やはり将来の不透明感が増す中で、「免許さえ取ればエリートになれる」確実性にあると思われる。私立大学医学部の6年間学費総額は、
もっとも安い順天堂大学や慶應義塾大学で2100万円台、高いところでは川崎医科大学や金沢医科大学が4000万円を突破している。医学生は開業医や社長だけでなく、一般サラリーマンの子供たちも少なくないという。

 それだけ難関の医学部に入るには、生半可な受験勉強では通用しない。医学部合格者数の多い学校の大半は私立の中高一貫校だ。実際に私立中学の説明会を覗いたり、学校案内のパンフレットやホームページの受験者向けサイトを見ると、東大京大の合格実績数と並んで、医学部合格者数の増加具合をアピールしているところが目立つ。

 田舎のふつうの公立高校から苦学して国立大学医学部に、といった層も残ってはいるが、医学部合格への王道は、遅くとも小学4年生からガッツリ進学塾に通い、難関中高一貫校に入学してからも医学部受験予備校でガリガリ勉強してゴールイン、というものになっているのだ。

 医学部入試が難しくなること自体は悪くない。医療研究、医療技術が高度化する中、受験勉強で試されるような情報処理能力に秀でた人材はどうしても必要だからだ。

 ただし、医師免許取得者の大半は、臨床医になる。臨床医は、生身の人を相手にする仕事だ。相手の命を預かる場合も少なくない。勤務医は労働時間が長く、持久走をなんなくこなせるような体力を要する現場が多い。適性のあるなしも大きい。

 そうした医学部に入るまでと、入ってからの求められる能力の違いに戸惑い、自信喪失をし、大学留年を重ねる医学生がずいぶんいる(その状況を公的に調査・公表してほしいものだ)。また、「勉強ができたから医学部を選んだ」という入学同期の医学生、研修医を中心に、自分が進むべき診療科を選べずに迷い悩むケースも増えている。

 基本的に医師になる人は真面目であり、研修医時代もハードな仕事を懸命にこなそうとする。が、医学部や医局の世界はかなり閉鎖的で、自身が抱えている辛さや悩みを相談する機会が少ない。結果、一人で疲れきってバーンアウト(燃え尽き)になる研修医が3割はいるという調査結果もある。

 とはいえ、無事に医師免許をとって、2年間の初期研修でいろいろな診療科の臨床経験を重ね、後期研修で専門医としての修業を積む流れにうまく乗れれば、やりがいはもちろん大きな仕事だし、将来の高収入も確率高く期待できる。順調に医学部を卒業、研修を終えて、市中病院に就職した場合、30歳前後で年収1000万円超えはごく一般的だ。

トピックス

生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
新宿・歌舞伎町で若者が集う「トー横」
虐待死の事例に「自死」追加で見えてきた“こどもの苛烈な環境” トー横の少女が経験した「父親からの虐待」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン