すると1月6日、北朝鮮が突然、「水爆実験成功」を発表。“予言”した弾道ミサイルではなかったものの、首相は即座に韓国の朴槿恵・大統領と電話会談で対応を協議し、「慰安婦合意があったからこそ日韓が連携できる」と胸を張った。自民党長老は安倍首相の内心を射貫く言い方をする。
「総理には運が必要だが、安倍君にとって核実験は僥倖だったね。これで拉致交渉の行き詰まりも、相手の核実験のせいだと責任転嫁できる。北に強硬な“本来の安倍”に戻れる」
株価の急落も“オレのせいじゃない”と深刻には考えていない。
「株価下落の原因は中国経済がおかしくなったからで、総理は中国経済が悪くなっているという報告には喜色満面にして耳を傾ける。習近平の失点は自分にプラスということ。それゆえに国会でアベノミクスの失敗と言われるとムキになって反論する」(首相側近)
そんな安倍首相のテンションが最高潮に達したのが新年早々の衆院予算委員会(1月12日)だった。民主党議員から拉致被害者の兄・蓮池透氏の著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社刊)の記述について質問されると、
「私が言っていることが真実だとバッジをかけて言える。違っていたら国会議員を辞める」
そう唸りをあげて反論したのだ。予算委員の1人が、「委員会室の最前列の議員に唾が飛んでくるほど総理は興奮しきっていた」と驚くほどの剣幕だった。
※週刊ポスト2016年2月5日日号