もうひとり、怪演を見せているのが、北条氏政役の高嶋政伸。高嶋政伸といえば、かつて大河ドラマ『秀吉』で長年、破天荒な兄の秀吉を支え続けたデキた弟豊臣秀長を演じて、爽やかさを印象付けたが、その二十年後、『真田丸』では爽やかさのかけらもない白目演技を見せつけている。「信濃には攻め込まない」ときっちり約定を書いたのに、相手にスキありとみるや白目がぎらりと光らせて「好機到来じゃ」とさっさと裏切って出陣開始。氏政は、主人公の真田信繁(堺雅人)らを悩ませるのだ。
そして、これからしばらく怪演が楽しめそうなのが、羽柴秀吉(小日向文世)。信長の草履取から己の才覚だけでのしあがった秀吉は、明智光秀を討ち果たしてウハウハだ。女性関係もウハウハで、天下人になってもウハウハ。笑いが止まらない小日向秀吉の声がいつ裏返るか。聞き耳をたてよう。(ちなみに日テレ系で放送される『天才バカボン』実写ドラマでは、高嶋政伸をおまわりさん、小日向文世がレレレのおじさんを演じるという。素晴らしい話である)
周囲が怪演を見せれば見せるほど、信繁の一途さや人柄が際立って見えてくる。これは三谷幸喜がベテラン演技派に託したドラマ盛り上げ作戦の一環なのだ。『真田丸』怪演祭りは、まだ始まったばかり。盛り上がっていきましょう!