ただ一方で、主婦には「あさ」への憧れも強い。それは「私もこうなりたかった」という思いがあるから。
「今は家庭に入っていますが、大学を卒業したばかりの頃は、仕事でバリバリやっていく自分を夢見ていました。でも夫が、結婚したら仕事を辞めてほしいって。夫が帰宅するのを待つ毎日で、なんか自分の人生ってなんだったのかな、と考えてしまうことがあります」(都内在住・39才・主婦)
結婚し、子供を産んで、姑に仕える―そんな経験がある主婦たちは、はつに共感し、よのに憧れ、もしかしたらあさのような人生もあったかもしれないと思いを馳せる。では、あさのように働く20代の未婚女性はどうか。意外や、「はつやよのに憧れる」という声も少なくない。
神奈川県に住む25才のC子さん(未婚・会社員)は、はつにも女性としての意志を感じると言う。
「やりたいことをどんどんやるあさも魅力的だけど、今の世の中、自分のやりたいことが次々に見つかることもそうないのに、やったら全部うまくいくなんて夢のような話。だから、自分の意志をしっかり持って家庭を守るはつに共感するし、私もそうなりたいなと思うんです」
マーケティングライターで、「草食系男子」などの流行語を世に広め、インフィニティの代表取締役を務める牛窪恵さんの働き方は、まさに現代版・あさといってもいい。牛窪さんが共感し憧れるのは、やはりあさだけれど、はつのちょっとしたせりふにハッとさせられることも多い。
「あさはさすがだなと思う半面、私は絶対にあそこまではやれないな、と思う。たとえば、あさはピストルを忍ばせて男だらけの炭坑に乗り込みましたよね。私は、会社のスタッフが女性ばかりだから、やれてきた。それに、働く女性っていまだに“女性らしさ”とか“女性としての感性”を強みにしようとするけれど、あさは男性的な部分で勝負する。いちばんすごいな、と思うのはその部分です。
はつもすごい信念の持ち主です。あさにアドバイスをした後、ひとりで、“何を偉そうに言うてますのやろ。子を産むことしかできんくせに”と言う。これって専業主婦のかたが負い目に感じる部分をそのまま言葉にしている。そんなふうに、妹と比べて葛藤しながらも、落ち込まずに自分の力で生きていこうとするパワーはあさに負けていません」
※女性セブン2016年3月24日号