「生前退位」のご意向を示されたことがNHKに報道された天皇陛下。皇室では陛下のご意向を受け入れる方向であるとも言われている。皇室典範の改定など、皇室の歴史に大きな変化を起こす、この陛下のご意向。今後、どのように動いていくのだろうか。
振り返れば、天皇皇后両陛下はいつも、現代にふさわしい「平成皇室」の姿を希求され、変化をいとわず、柔軟で幅広いスタンスをとり続けてきた。生前退位を実現する皇室典範改正は、その総仕上げといえる。
改革は皇太子時代からすでに始まっていた。1959年4月10日、皇太子さまは美智子さまを初の民間からの皇太子妃として迎え入れられた。当時、皇室には民間出身のお妃は前例がなく、宮中から猛烈な反発を受けた。ご成婚後も美智子さまに対する風当たりは想像を絶するものがあったが、その流れに変化をもたらしたきっかけは、浩宮さま(皇太子さま)の誕生だった。
両陛下は親子別居が当然だったそれまでの宮中のしきたりから、現代的な家族観を取り入れられた。
「平安時代から続いた乳人制度を廃止し、生後4日目から美智子さまご自身が授乳されました。両陛下は“子育てはできる限り自分たちで”という方針を持たれていました。幼少の陛下は、3才を過ぎた頃にはご両親である昭和天皇ご夫妻から離れ、また、戦時下の疎開中にもご両親と面会されることはほとんどありませんでした。慣例であったにせよ、甘えたい盛りの子供にとっては、寂しさを覚える時間だったことでしょう。陛下の変革には、昭和天皇の後押しもあったと聞きます」(ベテラン皇室記者)
幼少期の陛下のお気持ちは、美智子さまと築かれた家庭に表出した。
「食事はすべて専属の職員が作るのが当たり前だった時代から、お住まいの東宮御所に美智子さま専用のキッチンを設置されたのもそのひとつでした。美智子さまが作られる手料理を、浩宮さまとともに味わう。陛下は、そんなごく普通の家族像を望まれていました」(前出・ベテラン皇室記者)