ライフ

【著者に訊け】平岡陽明氏 『ライオンズ、1958。』

新刊『ライオンズ、1958。』を語る平岡陽明氏

【著者に訊け】平岡陽明氏/『ライオンズ、1958。』/角川春樹事務所/1600円+税

 1番センター高倉、2番ショート豊田、3番サード中西、4番ライト大下、5番レフト関口、6番ファースト河野、7番セカンド仰木、8番キャッチャー和田。今見ても惚れ惚れするような〈流線型打線〉である。投手陣も稲尾和久らが大活躍し、1956~1958年には名将・三原脩監督の下、3年連続の日本一に輝いた西鉄ライオンズは、福岡市民の夢を体現する〈野武士軍団〉として、絶大な人気を誇った。

『ライオンズ、1958。』は、西鉄黄金期に沸く昭和33年の博多を舞台に、虚々実々の人間模様を活写した平岡陽明氏のデビュー作だ。主人公は地元紙の西鉄番記者〈木屋〉と、〈博一会〉に籍を置く土建屋の〈田宮〉。2人は中洲の娼妓と出奔した二軍選手〈川内〉の始末を巡って出会い、後に兄弟と呼び合うほど絆を深める。

 大下や稲尾らも脇を固め、往年のファンには堪らないが、なぜ今、西鉄なのか?

「元々は僕がオール讀物の新人賞を取った後、角川春樹社長から『小説の背景たりうるスポーツは唯一、野球だと思う。どうだ、野球小説で時代を書き切ってみないか?』と言われまして。

 僕は高校も硬式野球部で、昔から野球漬けだったんですけど、野球が娯楽の王様で夢を託せた時代となると、巨人のV9か西鉄の3連覇しか思いつかない。そこで、以前取材したことがあった豊田泰光さんの当時の話が破天荒すぎて記事に書けなかったこともあり、『西鉄はどうですか』と言うと『おう、俺もそのつもりだった』って(笑い)。ただ西鉄はキャラもエピソードも面白すぎますから、事実に負けないドラマを書こうと、本当に必死でした」

 一口にヤクザといっても、南方から復員後、自堕落な日々を送り、昔気質の博徒〈洲之内〉に拾われた田宮の任侠道は、〈筋が通っているかいないか〉等々、〈明確な二分法〉で成立していた。例えば中洲の娼妓〈双葉〉と逃げた西鉄選手の1件だ。彼は兄貴筋の〈中山〉から捜索を一任され、川内と親しい木屋に協力を強要するが、堅気相手の仕事だけに気乗りはしないのである。

 一方木屋は川内の才能に高校時代から注目していたが、東筑の仰木が正二塁手に抜擢される一方、川内は二軍で燻っていた。当時西鉄選手の溜まり場といえば中洲。結果、川内は双葉と恋仲になり、子までなしてしまったのだ。

関連記事

トピックス

デビュー25周年を迎えた後藤真希
デビュー25周年の後藤真希 「なんだか“作ったもの”に感じてしまった」とモー娘。時代の葛藤明かす きゃんちゅー、AKBとのコラボで感じた“意識の変化”も
NEWSポストセブン
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
亡くなった辻上里菜さん(写真/里菜さんの母親提供)
《22歳シングルマザー「ゴルフクラブ殴打殺人事件」に新証言》裁判で認められた被告の「女性と別の男の2人の脅されていた」の主張に、当事者である“別の男”が反論 「彼女が殺されたことも知らなかった」と手紙に綴る
NEWSポストセブン
ものづくりの現場がやっぱり好きだと菊川怜は言う
《15年ぶりに映画出演》菊川怜インタビュー 三児の子育てを中心とした生活の中、肉体的にハードでも「これまでのイメージを覆すような役にも挑戦していきたい」と意気込み
週刊ポスト
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン