そのなかでも、新華社通信の馮武勇記者の署名入り記事「天皇講話蔵有玄機(天皇講話に隠されている深遠な意味)」の内容は陛下のお考えを無視した“憶測記事”の範疇を出ない。
記事は「突然、『生前退位』の意向を提起したのはおそらくある現実的な『危機感』によるもので、この危機感は安倍政権の動向と深く関係していると考えられる」と前置きしている。
そのうえで、「生前退位」は7月13日のNHKの特ダネによって世間に知られることになったが、この3日前の参議院議員選挙で「連立与党を含む『憲法改正派』の勢力が3分の2以上の議席を占め(中略)安倍政権は衆参両院で『憲法改正の提議』を行うための重要な難関を通り越したことを意味する。明仁天皇の『危機感』はまさに安倍自民党の憲法改正が紙面から現実に変わったことに起因する」と述べて、陛下の生前退位の真意は健康問題よりも、安倍政権による憲法改正への「危機感」の方が大きいと論評している。
さらに、記事は、自民党が2012年4月に発表した「日本国憲法改正草案」の少なくとも2点が「明仁天皇の一貫した信念と価値観に相反している」と断じている。そのうちの1点は「国防軍」発足であり、「これは一貫して戦争への深い反省を主張してきた明仁天皇にとって大きな衝撃だった」と馮記者は書いているのだが、馮記者はどのようにして「大きな衝撃」を受けたという陛下の心情を知ったのであろうか。