ただし、同じ肉でもハムやソーセージなど加工肉については、昨年、WHO(世界保健機関)が発がん性があるとの調査結果を発表し、波紋を呼んだ。毎日継続して1日当たり50g摂取し続けると、大腸がんのリスクが18%増加するというのだ。
これに対しては、日本食肉加工協会など関連業界が「因果関係が明らかにされていない」などと反論した。国立がん研究センターが公表した解説によると、「日本人の摂取量は世界的に見ても低く、平均的な摂取の範囲であれば大腸がんのリスクへの影響は無いか、あっても小さい」となっている。
では、動物性たんぱく質ではなく、植物性たんぱく質摂取の代表的な食べ物である豆腐や納豆などの大豆食品はどうか。長寿のための生活習慣を指導する秋津医院の秋津壽男院長は、豆腐や納豆が健康によく、寿命を延ばす食べ物であることは間違いないという。
「豆腐は豆乳を使用しているので良質のたんぱく質、レシチン、イソフラボンなど動脈硬化にいい成分が含まれているうえに低カロリーです。外国人が日本食をヘルシーだと羨むのは大豆系の食材を上手に調理して食べているからです。
ただし、冷や奴が醤油の中で泳いでいるような状態は、塩分過剰になりがちなので高血圧、ひいては脳卒中や心臓疾患のリスクが高まります。納豆も低糖質で高たんぱくなので、1日に5パックくらい食べても問題ありませんが、納豆の場合、同時にご飯を大量摂取することになりやすいので、注意が必要です」
摂りすぎは糖質過多を招くご飯だが、反対にまったく摂らないと、今度は「寝たきりになることもある」と秋津院長は言う。
「『炭水化物抜き』が注目されていますが、三大栄養素の一つである炭水化物をとらなければ、体の各部位に十分な栄養が行き届かなくなり、脳や内臓全般の働きにも支障をきたします。糖質は、筋肉を動かすエネルギーのもとでもあるので、不足すると筋力が落ちる。加えて、糖質を摂らないと相対的にたんぱく質を多く摂ることになります。そうなると腎臓に負担がかかってカルシウムの排泄量が増え、骨粗しょう症になるという説もあります」
長寿者が普段食べている食品の4位に入っていた「鮭」について専門家はこう解説する。
「ビタミンやミネラル、抗酸化作用をもつアスタキサンチンが豊富なので、がんを予防する効果が期待されている。高齢者の長寿を助ける魚です」(前出・白澤氏)
※週刊ポスト2016年11月4日号