その様子は、翌日、「独占スクープ」と題して14分間の妄想インタビューみたいな感じで放送された。それ自体、ジャーナリズムを装う見世物小屋みたいでグロテスクな動画だったが、もっと気になったのは、宮根誠司が電話の受話器を芸能レポーターの井上公造に手渡したときのASKAの第一声だ。
「(苦笑交じりに)公造さん、公造さん、あれ、曲流しちゃダメだって!」
ここでASKAが何を言っていたのかというと、28日の番組の中で、井上公造が以前、ASKAから渡された未発表曲を勝手に公開していたのである。2020年の東京五輪のテーマ曲とのことだったが、それは明らかな著作権侵害行為だ。妄想出まくりのASKAでも、「曲流しちゃダメだって!」と抗議したのはまったく正当なのである。それに対し井上公造は、「いや、でも、あれは逆に聞かせたほうがいいかなと思ったんですよ」と意味不明の言い訳で、抗議を続けようとするASKAの言葉をさえぎり、強引に話題を変えた。
悪質だと思った。かつて『平気でうそをつく人たち』というベストセラーがあったが、ASKAと電話をしている井上公造の無表情を見て、その書名を思い出した。あの数秒間はASKAのほうが絶対にまともだった。
そして、夜、ASKAが報道陣で溢れかえる自宅にタクシーで帰ってきたときの様子。これがなぜか、タクシー内のドライブレコーダー映像として各テレビ番組に流出しまくった。内容はなんてことないのだが、ぼけた画像から伝わる緊張感に異様なものがあった。まさかこんなものを撮られているとは思わないASKAからしたら盗撮である。妄想が膨らんで当然かもしれない。
タクシー内映像については、ネットが炎上した。後日、中小タクシー会社の協同組合である「チェッカーキャブ」が、<映像提供を行った社に対しては、グループとして厳罰をもって対応し、記録映像の管理徹底を図らせる所存であります>とウェブサイトに謝罪文を掲載した。でも、あの映像をマスコミに流した(売った?)タクシーの会社名を明かしたわけじゃない。タクシーに対する信頼感が相当崩れたし、あんなものを平気で流せるテレビ局というのがさらに信頼できなくなった。
でもって、そのタクシーから降りて、自宅に向かったASKAは案の上、殺気立った報道陣によってもみくちゃにされた。ガレージから出てきたASKAの愛車のベンツのエンブレムがもぎ取られ、路上に落ちていて、「絵」を撮るのに必死なカメラマンが気づきもせずにそれを踏みつけていた。
各テレビ番組は逮捕の瞬間の放送ということで大騒ぎ。その興奮ぶりは、たとえばオウム事件で麻原彰晃が逮捕されたときと変わらないくらいだった。