しかし、病状は想像以上に厳しい。七奈美さんが患った「小細胞肺がん」は、肺がん全体の15~20%を占め、進行が速く、転移もしやすい。七奈美さんも、おでこや骨など体のあちこちに転移していった。
「手術のできない難しいタイプのものでした。最初は抗がん剤が効いて体調もよくなったけれど、徐々に効かなくなって、意識障害も出てきたんです」
しかし、七奈美さんはあきらめず、治療法を探し続けた。
「娘は、可能性のあるものはやってみたいと前向きでした。きっと、彼女の中に『このがんは治らない』という自覚はあったと思います。だけど怖くはなかったみたいで、『治らなくても、がんに負けなければいいんだ』って言っていました。その精神には、ただただすごいと驚くばかりで…母としては娘がやりたいことはすべてやらせてあげたい、その一心でした」
カテーテルをがんの近くの血管まで挿入して、抗がん剤を局所的に使うことで効果を高めるがんカテーテル治療や当時「最新治療」として紹介された重粒子線や陽子線治療など、新たな治療法を探しては問い合わせた。血液の中の白血球を取り出して元気にして体内に戻すという免疫治療もキャシーがハワイで耳にして調べ、受けようとしていた。
最新治療は保険適用されないことが多い。芸能人一家とはいえ、その費用を支払い続けるのは大きな負担だったのではないだろうか。
「3才から入って、25年払い続けていた学資保険に、偶然お姉ちゃんの分だけがん保険がセットでついていたんです。だから、正確にいくらかは覚えていないのですが、かなりの額の保険が下りて、本人が望む治療はすべて受けることができました」
そんなふうに積極的に自身のがんを調べ、闘う七奈美さんを近くで見ていたのは、キャシーと七奈美さんの夫だった。
「ふたりで代わる代わる付き添っていました。お姉ちゃんが私の前で涙を見せたことは、一度もありませんでした。ただ意外なことに、父である勝野はほとんど姿を見せなかったんですよ。娘ががんで苦しむ状態を見るのが怖かったんでしょうね。それはそれで、しょうがないと思いました」
しかし、「治らなくても負けなければいい」そう言い続けた娘は、4か月後に息を引き取った。
※女性セブン2016年12月15日号