しばらくは漫才一本では暮らせず、バイト三昧の日々が続いた。塙は深夜のコールセンター員。土屋は、水商売の女性の送迎係。
「5、6年経った頃に気づいたんです。若手のお笑いの中にいるより、むしろ浅草のほうに自分たちを寄せたほうが、自分たちのキャラが立つんじゃないかって」(塙)
「僕らDAIGOさんと同じ年なんですけど、あんな若々しさ、最初からないですし(笑い)」(土屋)
「この老け顔ですから……」(塙)
「元々、塙の趣味が野球観戦に相撲。僕が競馬ですからね。よく考えたら趣味も若々しくない」(土屋)
「それで浅草の舞台を意識的に増やして、いろいろな師匠と飲みに行って話を聞いたり。そういう若手が珍しかったから注目され始めて」(塙)
「雑巾掛けをしてきた、というイメージがつきましたね。別に下積みをやったわけじゃないんですけど。J-POPのつもりが、いつの間にか若手で演歌をやるのは偉いみたいな」(土屋)
塙は2007年、史上最年少で漫才協会の理事に就任。言い間違い漫才も完成の域に達し、翌2008年から、若手漫才コンビ日本一を決める「M-1グランプリ」に3年連続で決勝に進出した。この頃から、ナイツここにあり、と世間に認知されるようになった。
●塙宣之(はなわ・のぶゆき)/1978年3月27日、千葉県生まれ。ボケ担当。漫才協会副会長。
●土屋伸之(つちや・のぶゆき)/1978年10月12日、東京都生まれ。ツッコミ担当。漫才協会理事。
●ナイツ/2001年に2人で漫才コンビ結成。2008年、お笑いホープ大賞 THE FINAL優勝&NHK新人演芸大賞受賞で注目を集め、M-1グランプリでは2008年から3年連続で決勝進出。落語芸術協会、三遊亭小遊三一門として寄席でも活躍中。平成25年度文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、第33回浅草芸能大賞奨励賞など受賞。2月15日にDVD『ナイツ独演会 この山吹色の下着』をコンテンツリーグから発売。
撮影■中庭愉生 取材・文■角山祥道
※週刊ポスト2017年2月10日号