スポーツ

「悲運の女王」浅田真央 五輪に翻弄され続けた日々

各国のメダリストが賞賛の声

 4月10日深夜。突然の引退発表は、世界を駆け巡った。朝刊は一般紙でも大きく報じられ、スポーツ紙は全紙一面。11日のニュース番組は、朝からずっと彼女のことばかり伝えている。緊急特番も次々に発表され、ツイッターには彼女の名前がこれでもかというほどにあふれている。超有名アスリートはもちろん、政治家も芸能人も、みんな口を揃えて言う。「ありがとう」。

 浅田真央(26才)がフィギュアスケートを始めたのは5才の時。10才からトリプルアクセルの練習を始め、小学6年生の時、全日本フィギュア選手権に特例で出場し、「天才少女」と騒がれた。氷の上であることを忘れてしまうほど、軽やかに、楽しそうに、妖精のような笑顔を浮かべる少女に、日本中が心を奪われた。

 しかし浅田が「悲運の女王」とも呼ばれるのは、いつも「あとちょっと」の運命に翻弄され続けてきたから。

 2005年12月、グランプリファイナルに初出場し優勝。世界に圧倒的な強さを見せたものの2006年の『トリノ五輪』には年齢制限で出場できなかった。

「2004年からの約2年が、浅田選手のピークという声すらあります。ライバルのキム・ヨナ(26才・韓国)との対決にも2度勝っています。技術的にはもちろん、精神的にもノープレッシャーで滑っていました。出場していれば、金メダルは間違いなかったでしょう」(スポーツ紙記者)

 この『トリノ五輪』で金メダルに輝いたのは、浅田が、その2か月前に全日本選手権で破った荒川静香(35才)だった。

 この頃、浅田の体には変化が訪れていた。身長が伸び続け、思うようにジャンプができない、滑れない。表彰台に上がれない大会もあった。フィギュアは、体重が100g増えただけでもジャンプや滑りのタイミングとバランスがまったく変わってしまう非常に繊細な競技だといわれている。

 精神的に追い詰められていく彼女を支えたのは、2011年12月9日に肝硬変で亡くなった母・匡子さん(享年48)だった。24時間一緒、練習も生活もともにし、時にリンクで泣きじゃくる娘を、呼吸が整うまで、何も言わずに抱きしめ続けたこともあった。

 匡子さんはかつて本誌・女性セブンのインタビューにこう話していた。

「決して真央は、みなさんが思うような天才ではありません。それなのに、必死に『バンクーバーでは金を目指す』と言い続けて、プレッシャーは相当なものでした」

 母のため、応援してくれるみんなのため──いつしか自分の夢は、自分のものだけじゃなくなっていた。

 そうして迎えた『バンクーバー五輪』。トリプルアクセルを3度成功させ、ギネス記録をつくったものの、キム・ヨナに破れ、銀メダルに終わった。「悔しさもありますし、自分の演技がパーフェクトにやれなくて納得していない」と、演技後のインタビューでは嗚咽し、涙が溢れた。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト