本書のクライマックスは、そんな選手たちが挑む、夏の甲子園に向けた府大会の試合である。チームはその試合で公式戦初勝利を目指す。だが、〈逆転のPL〉ならぬ〈逆転されるPL〉として試合は終わってしまう。そのあとである。どんな試合のラストよりも感動的なシーンが現れるのは。それにはファンならずとも涙をそそられる。
著者の取材は丁寧で、抑制された文章の行間からは取材の過程で著者がチームに抱いた愛情がにじみ出る。名門の廃部というショッキングな出来事を扱いながら、読後感はどこか清々しい。
※SAPIO2017年6月号